2019 Fiscal Year Research-status Report
ガロア表現およびその有理点問題への応用に関する研究
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16K17578
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
新井 啓介 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (80422393)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アーベル多様体 / 指標 / 自己準同型環 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガロア表現とはガロア群の表現のことだが、ガロア群そのものを理解する上で重要であり、さらに、数論幾何的対象を調べる手段としても極めて有用である。ガロア表現自体の計算は困難な場合が多いが、その中に指標が生じる場合は、その指標を利用することにより、計算したり性質を理解したりできる場合も多い。 一方で、アーベル多様体は楕円曲線の自然な高次元化であり、数論分野において、長い間、中心的な研究対象であり続けている。その中でも、モジュライの有理点という観点から、アーベル多様体の存在・非存在のための条件を得ることが重要になっている。 代数体上定義されたアーベル多様体から定まるガロア表現の中に指標が生じると、そのガロア表現の形は制約を受け、さらにそのような指標の可能性は限られてくることがこれまでの研究から分かっている。前年度の研究により、有理数体よりも大きい基礎体上の4元数環による乗法をもつアーベル多様体のガロア表現の中に生じる指標についての詳しい分類が得られた。 今回は、上記の乗法をもつアーベル多様体の自己準同型環の分類を得た。さらに、自己準同型環の分類と指標の計算を組み合わせて、ある種の高次元アーベル多様体が存在しないことの手がかりを得た。アーベル多様体の非存在のための条件は、代数的整数論の言葉を用いて明示的に記述することが可能と見られるので、そのあたりが今後の課題となってくる。さらに、今回の結果をモジュライの有理点に関する結果へと結びつけることも、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに蓄積してきた指標や自己準同型環に関する知見をもとにして、ある種のアーベル多様体の非存在に関する手がかりを得ることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
アーベル多様体から定まるガロア表現の中に生じる指標を調べることが研究の目標の1つであった。現在、4元数環の作用する高次元アーベル多様体に関して、指標の分類およびその非存在に関する明示的・計算可能な条件があと1歩のところで得られそうになっている。そこで、上記の事項を完成させるために、これまで行ってきたことの精密化を目指す。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金、その他の支出が少なかったため。 パソコン関連物品の購入、書籍の購入、文具類の購入、出張旅費、人件費等に使用する予定。
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