2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17580
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
森澤 貴之 工学院大学, 基礎・教養教育部門(公私立大学の部局等), 助教 (50724374)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 類数 / 代数体 / Z_p-拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、代数体の岩澤理論的拡大の最初の対象として、有理数体の有限次アーベル拡大体に注目し、その上の岩澤理論的拡大における類数の非可除問題の研究を行った。これまでの研究ではは、有理数体上の岩澤理論的拡大における類数の非可除問題に関し、数多くの研究結果が知られていた。しかし、一般のアーベル拡大上の岩澤理論的拡大の類数問題に関しての結果はあまり知られていない。さらに、アーベル拡大上の岩澤理論的拡大に関する既存の結果は、得られる値が非常に大きく、計算機と組み合わせることが困難であった。これに対し、本年度の研究の結果、アーベル拡大上の岩澤理論的拡大の類数に対し、それが素数で割れないための条件となる値を小さくすることに成功した。特に、小さいアーベル拡大体上の円分的Z_2-拡大に対しては、実際に計算機で計算できる程度の値まで抑えることができた。 また、本年度は、有理数体上の円分的Z_p-拡大体のイデアル類半群の構造に関しての研究も行った。本研究課題における研究対象は類数であるが、この類数とは、イデアル類群という集合の元の個数として定義される。これに対し、本年度研究を行ったイデアル類半群とは、イデアル類群を含むような大きな集合である。当然、イデアル類半群がイデアル類群を含んでいることから、両者には関係があることがわかる。だが、有理数体上の円分的Z_p-拡大体のイデアル類半群とイデアル類群に注目すると、それ以上に密接な関係があるということが本研究によって明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要欄での記述の通り、特に有理数体の有限次アーベル拡大体上の岩澤理論的拡大に対しては、これまでの結果を拡張することに成功した。また、その結果を用い、計算機による計算結果と合わせることで、「素数lがある合同式を満たしているならばZ_p-拡大体の全ての有限次中間体の類数を割らない」という定理を、有理数体に√5を付け加えた体上のZ_2-拡大体に対して証明することができた。これは、これまで有理数体上でのみ得られていたタイプの定理であり、本研究が順調に進展していることを示す一つの結果といえる。 また、本年度は、有理数体上の円分的Z_p-拡大体のイデアル類半群の構造に関する研究も行った。このイデアル類半群という集合は、整数論においてはあまり知られておらず、ほとんど研究がなされていない集合である。しかし、本年度の研究によって、特に有理数体の円分的Z_p-拡大体に関しては、このイデアル類半群が、本研究における研究対象であるイデアル類群と密接な関わりを持っているということが確認された。これは研究開始当初には想定されていなかったことであり、想定を越えた研究対象・研究結果である。故に、本研究は、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまでの研究によって得られている、有理数体の円分的Z_p-拡大体上のイデアル類半群の構造定理に関しての一般化を行う。すなわち、一般の代数体上の円分的Z_p-拡大体上のイデアル類半群の構造を決定し、イデアル類群との関係を調べていく。また、円分的Z_p-拡大体に限らず、一般のZ_p-拡大、さらには、その他の岩澤理論的拡大に対しても研究を進めていく。 また、有理数体上の円分的Z_p-拡大体に関しての研究も進めていく。有理数体上の円分的Z_p-拡大体の有限次中間体の類数は、単数、及び、円単数と呼ばれる数と密接に関わっている。そのため、この単数にある種のフィルトレーションを入れることで、その性質を各段階ごとに調べ、円単数との関係を合同式の言葉で書き下すことで、類数問題の研究を進展させる。
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Causes of Carryover |
国外の共同研究者との打ち合わせ出張を予定していたが、都合により行くことができなくなってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国外にいる共同研究者を訪ね、研究打ち合わせを行う。 また、国内の共同研究者との共同研究を新たに進めているため、その打ち合わせ出張旅費に充てる。
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