2016 Fiscal Year Research-status Report
周期積分の圏化と安定性条件の空間上のフロベニウス構造の研究
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16K17588
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 暁志 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (40755162)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ブリッジランド安定性条件 / 周期積分 / 圏論的エントロピー / フロベニウス多様体 / カラビ・ヤウ圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、周期積分を三角圏の安定性条件の空間を用いて圏論的に解釈・構成するというものである。今年度は当初の研究計画に従い、 (1)カラビ・ヤウ圏の次元を複素化したものに相当する圏の構成と、その上の安定性条件の空間の構成 (2)曲面のN角形分割に付随したポテンシャル付き箙を用いてのN次元のカラビ・ヤウ圏の構成 という二つの方向性で研究を行った。(1)については、カラビ・ヤウ完備化をトーラス作用付きの次数付き微分環に一般化する、またその上にトーラス同変な安定性条件の空間を構成し、トーラス作用のウェイトのシフトを複素カラビ・ヤウ次元と同一視するという研究成果は得られており、現在研究成果を論文にまとめている最中である。(2)については、共同研究者の香港大学のQiu Yu氏とメールで議論を進め、N角形分割に付随したポテンシャル付き箙の構成方の候補を発見することはできた。しかしながら、主要な性質の証明が終わっていないため、今後も共同で研究を進める予定である。 またこの研究に関連して、三角圏の自己関手の圏論的エントロピーを、安定性条件を用いて圏の対象の質量成長という概念を導入し、これを用いて表す公式を開発することが出来た。この研究成果は、この研究の目的である''周期積分=安定性条件の中心電荷''という背景にある哲学を強く反映するものであり、本研究の方向性が正しいことを示唆するものである。この研究成果についてはすでに論文を書き、ジャーナルに投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上で書いた(1)については、すでに研究成果が得られている。ただし、論文執筆が完了していないため、来年度は論文執筆を早急に完了させたい。(2)についても、共同研究者と共に研究は進んでおり、一定の成果が得られている。今後も継続して研究を進めることで成果が得られることが期待される。また、この研究を通して、当初は予想していなかった圏論的エントロピーについても、周期積分と安定性条件の対応を通して研究成果を得ることができ、論文にまとめることが出来たのは良い成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度については、(1)については論文執筆を完了させ、一方では安定性条件の空間上の接続の構成について研究を進める予定である。これは、当初の研究予定通りにADE箙という最も基本的な例を中心として、具体的な計算を中心に研究を進める。(2)については、共同研究者のQiu Yu氏を日本に招聘し、直接会って議論を進めることで一気に研究を進展させようと考えている。これにより、Bridgeland-Smith理論の高次元化というプログラムが推進されることが期待される。
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Causes of Carryover |
今年度は、JSPSの頭脳循環プログラムに参加し、海外の研究所(カナダのペリメーター理論物理研究所)に長期滞在していたので、結果として出張回数が少なくなり、予定よりも旅費を使用することが少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、今年度に出張が少なく学会等での情報収集が結果として少なくなった分、次年度への繰り越し分は学会や研究集会へ参加し、情報収集や研究発表をするためへの使用を予定している。
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Research Products
(2 results)