2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17591
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
井上 歩 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (10610149)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 対称性 / カンドル / 結び目 / 領域交差交換 / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のキーワードは「対称性」である.科学的対象には多くの対称性が潜んでおり,その対称性が対象の振る舞い・性質に大きな影響を及ぼしている.本研究の課題は,対称性の記述に優れた「カンドル」という代数を活用して,「結び目」の対称性を抽出・記述・決定付けることである.この課題に基づいて,本年度は次のような研究を行った. 1.回転対称は基本的かつ重要な対称性である.研究代表者は,(3次元に限らない)回転対称を記述するカンドルに着目して研究し,これらがある結び目達に固有なカンドル(基本カンドルと呼ぶ)と同型であることを示した.さらにその仕組みを詳しく研究し,これが結び目補空間の周期的な構造と密接に関係していることを明らかにした.その一つの帰結として,古典的に扱われてきた結び目達に固有な群(基本群)の振る舞いとは異なり,基本カンドルの位数は有限になり得ることを,組織的に解明した.この成果は,論文としてまとめ,学術誌で発表する予定である.また様々な集会で講演する予定である. 2.(清水遼氏との共同研究)結び目の局所変形の一つに領域交差交換というものがある.この操作の亜種として,領域凍結交差交換と呼ぶ局所変形を導入し,その振る舞いについて研究を行った.領域凍結操作交換は,鏡映対称を通して,領域交差交換と密接な関係を持つ.この性質に着目して,領域交差交換と領域凍結交差交換との類似性・相違性を明らかにした.この成果は,論文としてまとめ,すでに Journal of Knot Theory and Its Ramifications で発表している.また様々な集会で講演を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンドルを活用して結び目を研究するためには,結び目の基本カンドルの振る舞いを把握することが重要である.前述の通り,本年度の研究により,基本カンドルは結び目補空間の周期的な構造と密接に関係していることが分かった.この構造を手がかりとすれば,研究の進捗をより加速できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえて,今後の研究方針を次のように考えている. カンドルにはホモロジー群が定まる.このホモロジー群はカンドルを用いて結び目の性質を記述するためにも有用である. 研究代表者は,基本カンドルのホモロジー群はある意味で結び目補空間を記述するということを以前示している.基本カンドルが結び目補空間の周期的な構造に関係している以上,基本カンドルのホモロジー群にもその構造が反映されているはずである.まずこの点について研究を進め,関連性を解明する. 上記を踏まえ,具体的な結び目の対称性を抽出・記述・決定付ける.
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