2017 Fiscal Year Research-status Report
カンドル代数を用いた結び目不変量の再定式化と一般化および応用
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16K17600
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大城 佳奈子 上智大学, 理工学部, 助教 (90609091)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カンドル / バイカンドル / アレキサンダー多項式 / カンドルコサイクル不変量 / 結び目 / 絡み目 / ハンドル体結び目 / ハンドル体絡み目 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)捩れアレキサンダー多項式やカンドルコサイクル不変量を含む結び目不変量の族について、不変量の構成、性質についての研究、様々な具体的計算例の構成を行った。特に、通常の捩れアレキサンダー多項式は、単元倍を除いて決まる不変量であるのに対し、我々の不変量は、“単元倍を除いて”という文言無しに丁度定まる不変量である。具体的には, カンドル彩色付き結び目図式と(f1, f2)-Alexander pairという写像の組を固定したときに, 結び目図式から行列を取り出す. さらに, 行列から(複数の)行ベクトル, (複数の)列ベクトルを取り除き, 補正項なども含めて色々と調整し, 行列式を取ることによって得られる不変量を構成した。これら不変量が, 右手系三葉結び目と左手系三葉結び目を区別するものであることを証明し, この結果を論文として纏めた。この研究は石井敦氏(筑波大学)の協力の元行った。
(2)ハンドル体絡み目に対する、universal なバイカンドル彩色を与えるmultiple conjugation biquandle のホモロジー理論を構成し、ハンドル体絡み目におけるコサイクル不変量を定義した。具体的なコサイクルの構成、具体的なハンドル体絡み目不変量の計算も行った。この結果を論文をして纏めた。また、2017年12月に大阪市立大学で開催されたFriday Seminar on Knot Theory で研究報告を行った。この研究は、石井敦氏(筑波大学)、岩切雅英氏(佐賀大学)、鎌田聖一氏(大阪市立大学)、Jieon Kim 氏(釜山大学)、松崎尚作氏(拓殖大学)の協力の元行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「捩れAlexander 不変量は結び目群から得られる不変量であるため, 結び目の可逆性やカイラリティーを捉えることには利用できない. しかし, 捩れカンドル(今は捩れカンドルとはよんでいない。それらの元になる写像を(f1, f2)-Alexander pair とよんでいる。)から得られる行列形式の結び目不変量やイデアル形式の結び目不変量は結び目図式そのものから情報を取り出して構成されるものであるため, 一般には結び目群に由来するものではない. 従って, 結び目の可逆性やカイラリティ―の判定に利用できる可能性がある. 先ずはこの問題について考察し, 具体的応用例を見つけたい. 」というのが29年度の目標であった。 (f1, f2)-Alexander pairを固定した時に, 結び目図式から得られる行列について, (複数の)行ベクトル, (複数の)列ベクトルを取り除き, さらに補正項なども含めて色々と調整し, 行列式を取ることによって得られる不変量を構成した。右手系三葉結び目と左手系三葉結び目はこの不変量によって区別されることを証明した。つまり私たちの不変量がカイラリティーの判定に応用できることを示した。 しかし, 「私たちの結び目不変量がsquare knot やgranny knot 等, 捩れAlexander 不変量では区別できないような結び目を区別出来るかどうか判定したい.」という目標については, 何も解決できていない. square knot やgranny knotについて, カンドルや(f1, f2)-Alexander pair を変えることで不変量の計算を行ってみたが, それらを区別する手法は得られていない。今後もこの問題に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 捩れアレキサンダー多項式やカンドルコサイクル不変量を含む結び目不変量の族を曲面結び目に対して定義できるか考察したい. 具体的には次の方法で行いたい. (1)カンドル彩色付き曲面結び目図式から(f1,f2)-Alexander 行列を構成し, 図式の各初等変形(ローズマン変形)についてどのような変化が現れるかを考察する. その中で行列式を変えない行列の同値変形や補正項を構成し, 一つに決まる不変量の構成を目指す. 具体例の構成も行う.(2)曲面絡み目を表示するch-図式を用いて(f1,f2)-Alexander 行列を構成し, ch-図式の各初等変形(吉川変形)についてどのような変化が現れるかを考察する. その中で行列式を変えない行列の同値変形や補正項を構成し, 一つに決まる不変量の構成を目指す. 具体例の構成も行う.
2. ハンドル体絡み目に対する、universal なバイカンドル彩色を与えるmultiple conjugation biquandle のコサイクルについて研究を行い, 様々なコサイクルを構成したい. また, 仮想絡み目への応用についても考えたい.
3. 他にも, カンドルや絡み目, 曲面絡み目に関する様々な研究を行うことで, 新しく, 強力であり, より簡潔な, 結び目不変量の構成を目指したい.
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Research Products
(11 results)