2016 Fiscal Year Research-status Report
変分解析を中心とした非線形楕円型方程式の解構造の研究
Project/Area Number |
16K17623
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
生駒 典久 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (50728342)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 非線形楕円型方程式 / 最小化・最大化問題 / 臨界点理論 / 正値解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は変分構造を持つ非線形楕円型方程式(および連立方程式系)に対する解析,また関数不等式に関わる変分問題について研究を進めた.具体的には次のテーマについて研究を行った. 1.空間次元が2以上の全空間上で Trudinger-Moser 型不等式を考え,この不等式の最良定数を達成する関数(最大化元)の存在の有無について研究を行った.このような問題では拘束条件と関数の増大度が最大化元の存在,非存在を左右する.ここでは,どのような条件を課せば最大化元が存在するか,また存在しないかについて明らかにした. 2.Pucci 作用素を主要項として持ち,ポテンシャル関数と非線形反応項を含む方程式を1次元全空間上で考察した.この問題は,主要項がラプラシアンの場合の一般化である.空間次元が1の場合,方程式を書き換えることができ,書き換えた後では方程式が変分構造を持つことが分かる.この方程式に対し,臨界点理論を用いて空間無限遠で減衰する正値解の存在を明らかにした. 3.NLS-KdV系と呼ばれる3成分連立非線形楕円型方程式系に対し,この方程式系を2成分系へと簡略化した連立系について解析を行った.成分間の相互作用効果が引力的に働き,かつその効果があまり大きくない場合を考察した.両成分が正である解の存在を,制約条件が2つある最小化問題に帰着して示すことに成功した. 4.分数冪作用素と一般的な非線形反応項を含む方程式の非自明解に対する空間無限遠方での減衰評価を導いた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NLS-KdV系では3成分系の解析はあまり進まなかったが,簡略化した2成分系では最小化問題に帰着することにより正値解の存在を示すことができた.また,この解析を通じて取り組むべき研究課題をいくつか見つけることができたため,順調に進展している.同様のことが分数冪作用素を含む方程式に関する研究課題についても言える.Willmore汎関数の解析については困難な点が見つかり,順調には進まなかった.その代わりに当初予期していなかった研究課題について研究を進めることができたので全体としては概ね順調に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行った研究を基にして更なる発展を目指す.特に,分数冪作用素を含む方程式については空間次元が1の場合等を中心に研究を進める.NLS-KdV連立系については2成分系に対する研究を推し進め,正値解の特徴付け等を行い,特異摂動問題等への応用ができないかについて考察していく.
|
Causes of Carryover |
平成28年度中に平成29年度2回海外出張することが決まり,更にそのうち1回は長期間となるため平成28年度分の助成金の一部を平成29年度分へ繰り越した.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年5月および10月にイタリアへの出張があるのでその際の旅費として使用する.
|