2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17628
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野寺 有紹 東京工業大学, 理学院, 准教授 (70614999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自由境界問題 / 過剰決定問題 / 発展方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bernoulli問題とよばれる円環状領域上の自由境界問題に対し,先行研究において用いられてきた優解劣解法や変分法においては構成不可能な不安定解,すなわち双曲型解を得る新しい函数解析的枠組みを構築した.それは問題に現れる媒介変数を「時間」と捉え,媒介変数の変化に伴う解の変化を発展方程式を用いて記述し,その発展方程式を放物型方程式の技法を用いて解析するというものである.
これは線形化作用素の解析という点においてはNash-Moserの陰関数定理と類似するものの,非線形自由境界問題において現れる「微分の損失」という困難に対し,後者は問題を考察する空間の族を考えることでそれを回避し,一方,本研究手法は発展方程式の通常の枠組みで回避することができるため一つの空間だけで問題を考察できるという違いがある.したがって,複数の空間において解のしかるべき評価を得るという技巧的な煩わしさが必要がなくなり,解の構成が比較的容易になる点で本研究手法は優れている.また,発展方程式の解析に帰着されることで,無限次元力学系の視点を導入し問題の持つ不変量と解の挙動の関係を不変多様体を用いて特徴付けることで詳細な解挙動を得ることが可能となる.
また,導出した発展方程式のもつ可算無限個の保存則を得た.この保存則は可積分系との関連からそれ自体が興味深いだけでなく,不安定な双曲型解の構成において重要な役割を演じることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の双曲型解の構成までは到達していないものの,そのために必要である発展方程式的手法の確立をすることに成功している.特に,研究計画時には想定していなかった双曲型解の不安定性に由来する線形化解析の難しさが現れたたが,その一方で発展方程式がもつ保存則を導出することができた.この保存則を用いることで不安定性特有の困難を回避することができると期待している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがい,Bernoulli問題の楕円型解,双曲型解,および放物型解を発展方程式手法によって構成し,その定性的性質を調べる.特に,本研究の一つの大きな目標である双曲型解の構成に関しては共同研究者のAntoine Henrot教授(Institut Elie Cartan)と研究打ち合わせし解決する.
また,上記の不安定解の構成の枠組みを用いることで,Schiffer予想やBerestycki-Caffarelli-Nirenberg予想の解決に向けて研究を遂行する.
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Causes of Carryover |
研究開始時の進捗状況が予想よりも早かったため,次年度分の研究費を前倒し請求し,国外共同研究者との研究打ち合わせを行った. しかし,後半においては研究計画当初予期していなかった困難が生じたため,前倒し請求時に想定していた額よりも研究状況に則して実際に使用する金額に差異が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は研究進捗状況に合わせ,本年度に使用する予定である.特に,国内外における関連する研究集会における情報収集に用いる予定である.
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Research Products
(6 results)