2016 Fiscal Year Research-status Report
多様体及びグラフの幾何構造と不均質媒質による散乱理論
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16K17630
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| Research Institution | Doshisha University |
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Principal Investigator |
森岡 悠 同志社大学, 理工学部, 助教 (80726597)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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| Keywords | 関数解析学 / 関数方程式論 / 散乱理論 / スペクトル理論 / 逆問題 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
多様体上の透過固有値問題と, 離散シュレーディンガー作用素のスペクトル・散乱理論ならびにその逆問題についての研究を進めた。透過固有値問題に関しては、Lakshtanov-Vainbergの手法をコンパクト多様体の場合に拡張し、正の透過固有値の漸近的な個数評価を得た。この結果は、庄司直高(筑波大学)との共同研究として論文投稿中である。加えて、フランスの研究者とこの問題について情報交換を行った。離散シュレーディンガー作用素に関しては、埋蔵固有値と逆問題について研究を行った。埋蔵固有値に関しては、指数減衰するポテンシャルと長距離型ポテンシャルを持つ場合について、細部で若干異なるが、埋蔵固有値の非存在の証明を進めた。指数減衰ポテンシャルの場合には、以前代表者らによって得られたRellich型定理を拡張し、連続スペクトル内部に固有値が存在しないことを証明した。長距離型の場合にはMourreの理論を用いて同様のことを示したが、連続スペクトル内部に有限個の閾値を残した。これらの結果は研究課題遂行上基本的な成果であり、論文投稿に向け最終的な準備を進めている。逆問題に関しては、六角格子などを含むいくつかの格子に対する逆散乱問題の研究を行った。格子の場合にも、S行列と対応するディリクレ・ノイマン作用素を構成することができた。さらに、この問題にはディリクレ・ノイマン作用素に関する電気回路の逆問題の理論を適用できる。ポテンシャルを決定する逆問題だけでなく、ディリクレ・ノイマン作用素から格子欠損の位置を決定するアルゴリズムの構築を行った。その結果、(i)ポテンシャルの再構成、(ii)複数個の欠損の六角包の再構成、ができることが分かった。この成果に関しては、安藤和典(愛媛大学)、磯崎洋(筑波大学名誉教授)との共同研究として、論文投稿に向けた準備を進めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散シュレーディンガー作用素については、長距離型ポテンシャルの場合まで含めてスペクトル理論の基礎的な結果を得た。また、逆問題に関しても一般的な格子に対して成果を得た。以上の成果で、離散シュレーディンガー作用素に対する研究計画のうち基礎的部分については達成しつつある。多様体上の散乱理論に関しては、まず透過固有値問題についての成果を得たと同時に、本年度の研究を通じて透過固有値問題と非散乱エネルギーの関連付けについて一定の知見も得ることができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
多様体上の散乱理論では、非散乱エネルギーの研究に入る。ここまでの研究及び国内外の研究者との情報交換を通じて、透過固有値問題を経由する方法では、非散乱エネルギーに関するより進んだ理解を得るのは難しいようであることが分かってきた。このため、散乱理論を直接的に取り扱う方針に転換し、古典力学と量子力学を対応付ける準古典解析あるいはWKB解析を用いる方法を検討する。この方法は音響波動方程式のような不均質媒質の問題にも有効である。離散シュレーディンガー作用素に関しては、逆問題の成果に改善余地がある。特に欠損の再構成では、複数の欠損の位置を峻別して探査する方法が得られていない状況である。この方法を得るためには、離散グラフ上のコーシー問題のより進んだ理解が不可欠であり、引き続き研究を進める。また散乱の順問題に関しては、正方格子以外の一般的な格子について、本年度の成果を拡張する。
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| Causes of Carryover |
年度途中で申請時に予期していなかった所属機関の異動があり、その前後で、準備のため研究遂行を一時中断せざるを得ない時期があった。そのため、当初計画していた研究成果発表や情報交換のための研究集会参加を複数取りやめた。また、国外での研究成果発表のための旅費を計画していたが、本年度招聘された国際研究集会では主催者側が旅費を負担することになった。以上の理由で当初見積もりよりも支出額が低くなり、次年度使用額はこのために生じた残額である。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者による研究成果発表と情報交換のための旅費、および共同研究者や関連する研究者との打ち合わせ等をさらに加速させるため、これらの旅費に支出する計画である。
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