2020 Fiscal Year Annual Research Report
Operator study for quantum scattering phenomena
Project/Area Number |
16K17633
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石田 敦英 東京理科大学, 工学部教養, 講師 (30706817)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 時間減衰する調和振動子 / 分数べき相対論的シュレディンガー作用素 / 低速伝播評価 / ムールの不等式 / 随伴作用素 / 非局所的シュレディンガー作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
・通常の調和振動子の量子系では、すべての波動関数は束縛状態であることはよく知られている。調和振動子の空間変数2乗の項に時間に関して負べきの2乗で減衰する時間変数係数をかけると、散乱状態が引き起こされる現象を解明し2000年6月に論文として出版した。本論文において重要なことは、散乱状態をなすための、粒子に働く相互作用ポテンシャルの空間遠方での減衰の閾値を見つけたことである。この研究に引き続き、さらに時間減衰係数にかかる定数係数の値によってその閾値が大きく変わることを発見した。具体的には、相互作用ポテンシャルの空間減衰がその閾値を上回れば波動作用素が存在し、下回れば波動作用素が存在しないことを証明した。この結果は2020年12月に論文として出版された(愛媛大学の川本昌紀氏との共同研究)。 ・質量を持つ相対論的シュレディンガー作用素を一般化した分数べき相対論的シュレディンガー作用素について、散乱理論において決定的な役割を果たす不等式評価である低速伝播評価を証明した。相互作用ポテンシャルとしては、短距離型のみならず、長距離型ならびにクーロン型局所特異性を許容したものを含んだ広範なクラスを扱った。証明においてはムールの不等式と呼ばれる交換子評価が必要となるが、ムールの不等式を得るために用いられる新しい随伴作用素をいくつか提唱した。また系として正の固有値の離散性および多重度有限性を証明することができた。本結果は現在学術雑誌において査読中である。 ・分数べきラプラス作用素や分数べき相対論的シュレディンガー作用素、それらを含んだベルンシュタイン作用素をさらに一般化した非局所的シュレディンガー作用素について、波動作用素が存在するための相互作用ポテンシャルの減衰の閾値を解明した。この結果は2020年8月に論文として出版された(八戸高専の和田和幸氏との共同研究)。
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