2016 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド力学系としての二足歩行の吸引領域の形成メカニズムに注目した解析
Project/Area Number |
16K17638
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大林 一平 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (30583455)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 力学系 / 二足歩行 / 吸引領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
シンプルな受動歩行モデルに関するこの研究の一番基本となる部分に関する論文が、今年度ようやく出版することができた。この論文は2次元コンパスモデルと呼ばれるものを解析したもので、このモデルは棒状の足をジョイントで繋いだ非常に単純なものである。ひざ、胴体、腕、といった歩行に関係ありそうな力学メカニズムは殆んど含まれていない単純化されたモデルであるが、「倒立振子構造による重力による位置エネルギーと運動エネルギーの交換による歩行の実現」という歩行の最も基本的で重要なメカニズムがそこに含まれていると考えられ、二足歩行の特に力学的な観点から重要だと考えられている。そこで様々な数値計算による解析が進められてきたが、一方力学系の観点からの数学的な考察はほとんどなされてなかった。力学系の観点からはアトラクタとその吸引領域の形状が安定な歩行とその安定性を決定すると言え、数値的に吸引領域を計算することはなされていたが、その領域の形成メカニズムは謎であった。この論文では、力学系の安定多様体と不安定多様体、そしてそれに付随するλ補題というアイデアを利用してコンパスモデルの吸引領域の形成メカニズムを明らかにし、歩行の安定性を決定する重要な要因としてこれらの力学系理論からの概念が重要であることを示した。二足歩行は力学的に不安定で難しい、というのはすでに良く知られている話であり、静的な力学の問題としては明らかであるが、それが動的な力学系的な観点からも示されたことには大きな価値がある。この論文は前の年度から取り組んできたが、なかなか受理されずに改訂を続けてきた。それがようやくこの年度に完成したのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在は、より現実的なモデルでの解析をしようとしているが、あまりうまくいっていない。要するに二足歩行モデルが転倒してしまいちゃんと歩かせるのがうまくいっていない。数理的にはこの研究のアイデアを使うためには複雑すぎず簡単すぎないモデルの設定が肝心なのだがそこで遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
とりあえずもう少し広く先行文献を探してうまく歩くモデルを探す。段階的にモデルをリアリスティックにしていきたいので、コンパスモデルよりは複雑だが複雑すぎない、というようなモデルを探すのは結構難しいがここを進めなければ先に進められないのでここを検討する。ある程度うまくいったならばそのモデルで吸引領域の数値計算を進める。また、最近登場した研究でハイブリッド系の吸引領域の形成メカニズムに新しい視点を導入するものを見つけた(吸引領域に生じる「穴」をうまく説明するメカニスム)ので、それを本課題研究と組み合わせて新たな結果が得られないか調べる。
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Causes of Carryover |
予想外に先方が出張費を出してくださったり、別のプロジェクトの経費での出張が多かったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出張1回分、もしくは長期出張用に使用する。
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Research Products
(2 results)