2017 Fiscal Year Research-status Report
単調欠測データに基づく検定統計量の高次元大標本漸近理論とその応用
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16K17642
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
首藤 信通 神戸大学, 海事科学研究科, 講師 (00634099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仮説検定 / 統計的漸近理論 / 欠測値データ / 楕円分布 / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,単調欠測データの観測を仮定した下で仮説検定問題を扱い,各漸近枠組みの下で機能する検定統計量の近似分布を得ることで,高い精度を保つ仮説検定方式の提案を行うものである.特に,単調欠測データの下では検定統計量が複雑な形となるため,完全データの場合よりも理論的に困難な状況下で漸近分布や期待値に関する結果を導出することが必要となる.今年度は昨年度得られた研究成果について学術雑誌における公表を行うとともに,主として以下の2点の研究成果を得ている. 1.多次元正規母集団から2-step単調欠測データ(欠測パターン数が2の単調欠測データ)が得られた仮定の下で,平均ベクトルの検定統計量に対し,ある対立仮説の下での検出力関数に対する漸近展開公式を与えた.数値実験の結果から,ある状況下では主結果によって検出力を高い精度で近似可能であることを確認している. 2.楕円分布を母集団分布とする2-step単調欠測データが得られた仮定の下で,平均ベクトルに関する検定統計量の帰無分布に対する漸近展開の導出を行った. 1の結果については,日本計算機統計学会第31回シンポジウムにおいてその成果の一部を公表しており,現在専門誌への投稿準備中である.2の結果については,現在,導出過程の再確認や数値実験による近似精度の評価を行っている状況にあり,これらが完了し次第,専門誌への投稿準備を進める予定である.なお,上記の他,高次元漸近枠組みにおける漸近展開に関する基礎研究の成果により,変動係数に関する検定統計量の漸近分布に関する結果を得ている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定を変更し,多変量正規分布や他の多変量非正規分布を含む形で拡張された母集団分布のクラス(楕円分布)の場合における研究課題を優先したため,証明,計算,数値実験等により多くの時間を要した.そのため,研究成果の公表が遅れていることを鑑みて,上記の自己評価を与えた.次年度は当初予定していた研究課題と併せて,今年度と同様,楕円分布の下での研究成果の導出にも取り組む予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き,多変量正規性の下で欠測メカニズムの仮説検定問題に関する成果に対するk-step単調欠測データの場合への一般化を目指す.検定統計量の簡略化に関する方針は得ているが,期待値の導出が課題として残されている.この点については微分演算子を用いた導出方針も含めて検討する.また,楕円分布の下では,一般に検定統計量の漸近分布が尖度パラメータに依存することが分かっている.従って,尖度パラメータの推定に関する研究課題を中心として,研究成果の導出に取り組む予定である.その他,高次元データにおける同様の研究課題への対応も検討する予定である.
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Causes of Carryover |
2017年度は交付決定額939,349円に対し885,388円を使用しており,次年度使用額53,961円が生じている.次年度使用額は,研究論文1編の完成に若干の遅れが生じ,予定していた英文校正費や旅費への使用が少額となったことによるものである. 2018年度は本研究課題の遂行に必要となる文献(特に楕円分布関連の文献)の購入に関わる物品費(消耗品)を中心として,国内で開催予定の学会(統計関連学会連合大会,日本数学会)における研究発表および最新の研究動向の調査,研究打合等に必要となる旅費を計上する予定である.これらの費用に対し,2018年度交付予定額と前年度分の使用額53,961円を合わせて使用する予定である.
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Research Products
(3 results)