2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17652
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
井手 勇介 神奈川大学, 工学部, 助教 (70553999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 固有空間解析 / 量子ウォーク / コンタクトプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は,ネットワーク(グラフ)上のダイナミクスのスペクトル解析に重点をおいて研究を行った.特に,対称性の高い円環グラフ上の離散時間量子ウォークについて2篇の論文を出版した.1つ目の論文は,各頂点に同じ量子コイン(2次ユニタリ行列,行列式=-1)を置き,フリップ・フロップと呼ばれる推移規則で時間発展するモデルに関する解析である.本論文では,離散時間量子ウォークの分布が出発点に関して対称になるための条件を明らかにした.2つ目の論文は,各頂点に固有値は同じだが,一般に異なっても良い量子コイン(2次ユニタリ行列)を置き,フリップ・フロップまたはムービング・シフトと呼ばれる推移規則で時間発展するモデルに関する解析である.本論文では,時間発展作用素の周期性(ある時刻で,時間発展作用素が恒等作用素になる現象)について,既存の結果の一般化を行った.いずれの論文に関しても.離散時間量子ウォークの時間発展作用素の固有空間解析を用いて解析を行っている.具体的には,時間発展作用素の固有値・固有ベクトルを実際に求めて,必要な情報を取り出す手法を用いた.有限グラフ上の感染過程を調べるために,グラフに付随する行列の固有値・固有ベクトルとグラフトポロジとの関係が重要になる可能性が高いため,扱うモデルに違いはあるものの,これらの研究は研究目的達成のために必要な研究と考えられる.一方で,「不動点定理の話題 コンタクトプロセスの最近の話題」と題した文書を共著で慶應義塾大学から出版した.この中で,本研究課題の基礎となる[Peterson, J., Stoc. Proc. Appl. 121, 609-629 (2011)]の解説と,定理の一般化について述べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の基礎となる[Peterson, J., Stoc. Proc. Appl. 121, 609-629 (2011)]の解説と,定理の一般化について述べた文書を纏めることで,2017年度以降の具体的なグラフに対する検討を行うための下地ができた.また,離散時間量子ウォークに関する固有空間解析の進展により,グラフに付随する行列の固有値・固有ベクトルとグラフトポロジとの関係の整理が進んだ.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,グラフに付随する行列の固有値・固有ベクトルとグラフトポロジとの関係の整理を進めていき,分枝過程の各頂点における粒子の生存確率を具体的に求める手法を,グラフトポロジ毎に整理する予定である.
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Causes of Carryover |
2016年度は,当初予定していた海外出張を中止したため,旅費に余剰が出た.また,謝金使用分も想定より少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は,2016年度に生じた余剰分を鑑み,旅費・謝金への配分を多めに計画したい.
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Research Products
(9 results)