2017 Fiscal Year Research-status Report
太陽対流層全体を一貫して取り扱った数値計算への挑戦
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16K17655
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
堀田 英之 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (10767271)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 熱対流 / 光球 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽の深部から表面までを一貫してとく数値計算コードが完成し、世界で初めてとなる太陽の対流層のそこから表面までの計算を実現した。 太陽対流層は密度が100万倍、温度が200倍ほど変化するために、対流層の底と表面で空間・時間スケールが大きく変わる。そのため数値計算による一貫した取り扱いが困難である。また、光学的厚さが大きく変わること、背景場に対する擾乱の大きさが大きく変わることから取り扱いに工夫が必要である。 これらを正しく取り扱うために、既存の数値計算コードを大きく改訂した。まずは、表面の輻射輸送を正しく取り扱うことにした。当初の計画ではAbettらが用いていた準解析的な手法を用いて体表表面での冷却を取り入れてようとしていたが、実際に計算コードのこの手法を実装してみると、正確に輻射を解いた場合と比べて10%程度熱対流速度などがずれることがわかった。しかし、将来に向けて複雑な輻射輸送を解くのは得策でないと考え、輻射輸送を一方向のみ解く方向を採用した。太陽表面では、冷却はほぼ重力方向に起きるためにこれで十分な可能性が高いと考えたのだ。また、光学的に厚いところでは拡散近似を用いてエネルギー輸送を計算した。12本の輻射輸送と解いた場合と比較して、この手法が妥当であることを確認した。また、背景場に対して擾乱が大きく変わることに対しては、状態方程式の取り扱いを変えることで対応した。太陽の深部では、背景場に対する擾乱が10^-6程度しかないので、線形の状態方程式を用いて、表面付近では線形の近似が壊れてしまうので、テーブルを用いた状態方程式を使った。 これら開発した数値計算コードを用いて世界で初めて太陽の対流層の底から表面までの一貫した計算を実行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2年目にあたる2017年度には数値計算コード開発、磁場がない時の計算実行までが完了しているためにおおむね順調に進展していると評価した。 当初採用を予定していたAbbettの提案する輻射冷却を見積もる数値計算法は、精度があまりないために、採用することができなかったが、結果として、より精度の高い計算負荷はそれほど高くならない計算方法を採用することができたために順調に進んでいると考えている。 また、計算方法の妥当性の確認のために、太陽表面で輻射輸送をより詳細に解いた数値計算コード(RAMENS)の計算結果を提供してもらうことができたのも研究の進捗を確実にした。このことにより、手法の検討をおこなうことができ当初の目的を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、ほぼ計画通りに順調に研究が進んでいるので2018年度には当初の予定通りに対流層の底を出発した磁束がどのようにして表面で黒点を形成するかを数値計算により明らかにする予定である。計算を実行するための数値計算資源もすでに確保してあり、計画通りに研究が進むはずだと予想している。
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