2016 Fiscal Year Research-status Report
大規模撮像分光データを用いた銀河化学進化の環境依存性の解明
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16K17659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢部 清人 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (60749480)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銀河形成進化 / 化学進化 / 環境効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
すばる望遠鏡FMOSで得られた大規模近赤外分光サンプルを用い、赤方偏移1.4付近における銀河の金属量と環境の関係を調べた。具体的には、Fastsoundサーベイにおいて得られた約4000天体のFMOS近赤外分光データを用い、天体の空間分布および分光的赤方偏移の情報から銀河の局所密度を計算した。計算方法は10th nearest neighbor法を始めとしていくつかの方法を試している。得られた密度の大小および3つの星質量ビンでサンプルを分割し、個々のビンにおいてスペクトルのスタッキング解析を行った。得られた合成スペクトルからはHα, [NII], および[SII]輝線が有意に検出されている。これらの輝線フラックスの比からガス金属量を導出し、星質量-金属量関係の銀河環境による違いを調査した。その結果、高密度領域における銀河は金属量が高い傾向があることが分かった。高密度領域における化学進化が進んだ銀河間ガスの降着など、いくつかの原因を考察中であり、これらの成果を査読論文としてまとめている段階である。また、これらの初期成果を国内学会および国際研究会において発表した。 より低赤方偏移における金属量と銀河環境の関係を、すばる望遠鏡HSCの深い多色撮像データを用いてより詳細に調査するため、現在SDSSの分光データおよびHSCの撮像データの部分的な取得を行ない、現在データの品質チェックなどを行っている。HSCによる大規模サーベイ観測は現在進行中であり、今後続々と新たなデータが取得されると期待されている。HSCのデータベースから効率的にデータを取得するスクリプトの作成を始め、新たな観測データがデータベース上で公開された際にスムーズにデータの取得が行えるよう環境整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の目標である、すばる望遠鏡FMOSで得られた大規模近赤外分光サンプルを用いた赤方偏移1.4付近における金属量と銀河環境の関係に関する調査は、データ処理などの主要な解析をほぼ終えている。局所密度およびスペクトルのスタッキング解析から得られた金属量を用いて、星質量-金属量関係の環境依存性を見た結果、高密度領域における銀河は金属量が高い傾向があることが分かるなど、ある程度の結果が出ており、現在査読論文としてまとめている段階である。またこれらの結果は初期成果として国内学会および国際研究会において発表した。 第2の目標である、低赤方偏移におけるSDSSおよびすばる望遠鏡HSCを用いた環境効果に関する研究はまだ主要な解析には達していないが、データ処理の環境整備を中心に行っており、次年度に本格的な解析を行ない、結果をまとめる予定である。HSCの大規模データの取得と必要の情報の抽出など基本的な処理の方法は、一部のデータを用いてすでに行っており、解析環境の整備はすでに整っていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1の目標である、すばる望遠鏡FMOSで得られた大規模近赤外分光サンプルを用いた赤方偏移1.4付近における金属量と銀河環境の関係に関する調査について、現在ある程度まとまった成果に関して査読論文を出版することを目標にする。データ処理などの主要な解析をほぼ終了しているが、結果の吟味およびその結果に対して考えられるいくつかのシナリオに関してより詳細を詰める予定である。また、宇宙論的シミュレーションやその他理論的研究から期待される結果との比較に関してもより詳細に調査を行う予定である。 第2の目標である、SDSS分光データおよびすばる望遠鏡HSC撮像データを用いた低赤方偏移における環境効果に関する研究については、主要な解析を本格化させる。データ取得の環境整備はほぼ完了しているので、その後の解析はスムーズに行われることを期待している。ある程度の結果が出た段階で、初期成果などを積極的に国内・国際学会等において発表する予定である。また、赤方偏移1.4付近での結果と合わせて、最終的な結果を査読論文として出版することを予定している。
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Research Products
(7 results)