2018 Fiscal Year Research-status Report
低温度星周りの惑星探査:系外惑星の多様性とその起源
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16K17660
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平野 照幸 東京工業大学, 理学院, 助教 (10727449)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 系外惑星 / トランジット / 低温度星 / 近赤外高分散分光 / K2ミッション |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は以下の2つの研究を推進した。 研究1:近赤外高分散分光器IRDの試験観測とデータ解析 2017年度から実施しているすばる望遠鏡のIRD分光器の性能試験を継続し,試験観測として2018年6月,8月,10月にバーナード星等の視線速度標準星を観測した。2017年度の成果として1ヶ月程度の観測スパンであれば視線速度精度3m/s程度が実現できることを示していたが,2018年度の観測でIRD分光器が約1年にわたって視線速度精度3m/sを達成できることを示した。特に,2018年度はハワイ島で起きた地震等の影響でスペクトルの位置が検出器上で空間方向ずれてしまっていたにもかかわらず精度が達成できたことで,IRD分光器の長期的な運用が可能であることが明らかとなった。 研究2:低温度星まわりの惑星の特徴付け 近年地上・宇宙からのトランジットサーベイによって特に低温度(3500K以下)の恒星のまわりで系外惑星が見つかってきている。ただしこうした低温度星は可視光で暗く,詳細な特徴付けが困難であった。本研究では最近見つかった低温度星まわりのトランジット惑星に対してその特徴付けとして2018年8月から2019年1月にかけ,(1) 視線速度観測による惑星質量の測定,(2) トランジット中のロシター効果の観測による惑星の軌道傾斜角の測定,という2つの観測を最新のIRD分光器を使って実施した。得られたデータは現在も解析中であるが,簡易解析でIRD分光器は期待された精度が達成できていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究1」については,予定通り観測が実施され順調に解析が完了した。解析パイプラインについては現在も整備中であるが,2018年度の一年間で多くの改良が加えられ,得られた視線速度結果も当初に比べてかなり改善した。 「研究2」については,2018年8月-9月は悪天候とトラブルのためすばる望遠鏡での観測時間のうちかなりの割合を失った。晴天時に得られたデータについては順調に解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究1」については,2018年度でIRD分光器の性能評価と視線速度解析パイプライン作成の大半が完了したが,パイプラインに関しては地球大気のスペクトル線の影響を除去するのに理論モデルを用いているため,これを実際の観測スペクトルのライブラリに置き換えるなど,いくつか改善点も残っている。今後はこれを踏まえて試験観測,パイプラインの改良を実施する。また2019年2月からはIRDを用いた晩期M型星を対象としたドップラーサーベイ観測が開始されており,今後はそのデータの解析も順次実施する。 「研究2」では,2018年度得られたデータの解析を継続するとともに,その結果を踏まえつつ2019年6,7月に予定されているIRD観測の計画を立てる。観測によって新たなデータが得られれば解析して結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由) 2018年度は別経費による長期出張が多く,「旅費」が当初よりも少ない支出で済んだため。 (使用計画) 2019年度はすでに6,7月の両月にすばる望遠鏡を用いた観測が予定されており,主に観測にかかる旅費として計上する。
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Research Products
(28 results)