2016 Fiscal Year Research-status Report
ALMA太陽観測で探るコロナ加熱:波動の生成を捉える
Project/Area Number |
16K17663
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
岡本 丈典 国立天文台, チリ観測所, 特任助教 (70509679)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 太陽 / ひので / IRIS / ALMA / プロミネンス / 波動 / コロナ加熱 / 回転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日米の太陽観測衛星「ひので」「IRIS」「SDO」、及びアルマ望遠鏡を活用し、太陽コロナ加熱問題解明に迫るべく、データ取得とその解析を推進するものである。目的達成に向けた最初の手順として、2016年度より太陽観測が開始されるアルマ・サイクル4 への観測提案を行い、grade B 評価で採択された。その内容は、太陽プロミネンス中を伝播する波動とアルマ・バンド 3 及びバンド 6 を用いた温度変化との対応関係の調査である。2017年4月時点においてこの観測は完了しておらず、今後データが取得され次第、解析を実施する予定である。 アルマ観測に並行し、太陽大気波動の解析のためにはコロナ中で見られる活動性を正しく理解しておくのが重要であることから、「ひので」が観測したプロミネンスの興味深い運動について解析を行った。この観測では、比較的穏やかなプロミネンス中に突如明るい筋状構造が出現し、それらが連なって規則的に上昇する様子を捉えた。「ひので」観測による平面内運動、及び「IRIS」による視線方向の動きを考慮した結果、この現象は螺旋状のプロミネンス磁場が周囲の磁場とつなぎかわり、部分的にねじれが解消することで引き起こされていることがわかった。この際、ねじれの伝播も捉えており、エネルギーの輸送や加熱の点でも重要な示唆を含んでいる。この解析結果については査読論文が受理されたほか、4件の国際会議(うち3件口頭発表)、1件の国内学会にて講演を行った。回転運動がはっきりしている好例として、出版直後より海外の研究者らの講演で引用されるなど、評価は高い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルマ太陽観測提案が採択されたことは、本研究の遂行のためには非常に重要であり、良いスタートが切れたと言える。採択された観測は、世界で15件受理された太陽観測提案のうち、唯一太陽縁外のプロミネンスを狙ったものであり、アルマによるプロミネンス研究において主導権を握ることができる点でも貴重である。また、本研究と関連が深い、共同研究者による観測提案も 3件採択されており、来年度以降の研究推進においても見通しは明るい。 しかし、本研究を進める上で 1つ問題が発生した。それは、「ひので」に搭載された可視光望遠鏡の撮像装置が2016年度中に使用不能に陥ったことである。これは、太陽面の運動を高時間・高空間分解能で捉える観測装置であり、波動生成の捕捉の主力であった。一方、「ひので」可視光望遠鏡には偏光分光器も積んでおり、こちらは現在も正常に作動している。そこで、スリット方向の1次元観測にはなるが、高空間・高時間分解能による視線方向速度や磁場の変動を利用することで、課題を変更することなく当初の目的の達成を目指す。そのために、偏光分光器の本研究に対する使用可能性評価を行った。これまでのところ使用可能と判断しているが、今後偏光分光器が本研究に不適格であると判断した場合は、申請書に記載したバックアッププランに基づき、「ひので」「IRIS」、及びアルマによる波動の伝播・散逸の性質をより深く調べる研究に移行することとする。なお、この評価の遂行の際に副次的な研究成果(太陽面の磁場強度と空間分解能に関する考察)を得た。これについては来年度以降、論文にまとめた上で別途報告予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずはアルマ・サイクル4 で取得される予定のデータ解析を実施し、プロミネンスにおける波動の振る舞いについての研究を行う。並行して、アルマ・サイクル5 における観測提案を行い、再度「ひので」「IRIS」、及びアルマ望遠鏡による共同観測を行い、データ数を増やすことを目指す。サイクル5 はサイクル4 からの性能改善はなく、基本的には同じ観測内容を予定している。サイクル5 への提案が採択された場合、その観測は 2018年7月に実施されるため、2017年度内はサイクル4 のデータ解析に加え、「ひので」「IRIS」のみを用いた観測データ解析を遂行する。進捗状況報告の項目で記述した性能評価に伴う副次的な研究成果(太陽面の磁場強度と空間分解能に関する考察)についても、本研究との関連を踏まえた上で報告したい。
|
Causes of Carryover |
年度後半に計画していた海外出張(国際会議出席)は別研究費を獲得できていたため、この研究費で支弁することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、または次々年度に海外(アメリカ)での長期滞在研究を計画しており、そのための費用に合算して使用する。時期が特定できない理由は、アルマ観測が成功裏に実施されることが条件であるためで、アルマ・サイクル4 の観測が天候や観測システムエラーなどで中止になった場合は次々年度の渡航が濃厚となる。また、これに加えてヨーロッパ諸国の研究機関での研究発表と議論を行うことも考えており、先述の滞在研究の時期及び予算と干渉しないよう実行する予定である。不足分はドイツの研究機関(マックスプランク太陽物理学研究所)より支援の申し出を既に受けているので、適宜調整しつつ渡航計画を練る。
|
Research Products
(11 results)