2016 Fiscal Year Research-status Report
多階層モデルによる超巨大ブラックホールと銀河核ガス円盤の共進化過程の解明
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16K17670
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
川勝 望 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 准教授 (30450183)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 理論天文学 / 活動銀河核 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らがこれまで構築した銀河核ガス円盤のモデルに、降着円盤および銀河核ガス円盤からの輻射を考慮することで、銀河核ガス円盤の幾何学構造とブラックホールへのガス降着率へ与える影響について調べた。その結果、銀河核ガス円盤の幾何学構造は、ブラックホール質量、活動銀河核の光度、ガス円盤の密度に強く依存することが分かった(川勝、和田 2017投稿準備中)。また、アーカイブデータやALMA観測で得られた近傍銀河(NGC1068, NGC1097, NGC3227, NGC4051, NGC7469他10天体)に対する銀河核ガス円盤の物理状態と理論モデルを比較することにより、次のことを明らかにした。具体的には、まず我々はALMA等を用いた高密度ガストレーサーであるHCN分子輝線の観測から、銀河核ガス円盤の質量を推定した。そして、銀河核ガス円盤の質量が銀河中心の活動性と正の相関を持つことが観測的に初めて明らかになった。この相関は、母銀河スケールでのガス観測では見られないものであり、銀河核ガス円盤とブラックホールの成長機構に関連があることを示している。また、文献データから、降着率の高い活動銀河核に付随する銀河核ガス円盤は幾何学的に厚く、逆に降着率の低い活動銀河核に付随する銀河核ガス円盤は薄いという示唆も得た。これらの結果は、我々の理論モデルで予言されているように、銀河核ガス円盤の重力不安定性がブラックホールへの物質降着を左右する鍵となっていることを示唆するものである(泉、川勝、河野, 2016:採択済)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論モデルと比較する対象である近傍銀河の高分解能観測については、着実に成果を挙げている。一方で、輻射の効果を取り入れた理論モデルの構築および計算結果は得られているが、モデルの信憑性を確認する作業に少し時間がかかり、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
輻射の効果を取り入れた理論モデルの信憑性を確認し、銀河核ガス円盤の幾何学的構造とブラックホール成長率の関係についての研究を今年度早い時期に論文としてまとめる。その後、ブラックホール近傍からの膨大な輻射が本当にブラックホール成長を抑制する効果として働くのか、ブラックホール成長率と銀河核ガス円盤からのアウトフロー率の関係を数値計算により系統的に調べる。理論研究と同時に、モデル予言を検証するために、ALMAを始めとする観測結果との比較を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初は研究課題に関する初期成果(理論モデル)を学会で発表する予定であったが、前述したようにモデルおよび計算結果の確認に時間がかかり、予定していた九州大学で開催された日本天文学会での発表に間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度当初に、共同研究者との研究打合せの旅費の一部に使用する予定である。
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