2017 Fiscal Year Research-status Report
太陽から恒星へ:シミュレーションと観測に基づく普遍的な黒点・フレア理論の構築
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16K17671
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
鳥海 森 国立天文台, 太陽天体プラズマ研究部, 特任助教 (30738290)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 太陽物理学 / プラズマ物理学 / 磁気流体力学 / 太陽黒点 / 太陽フレア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の2年度目である平成29年度は、初年度に行った観測研究をもとに理論研究を実施した。 太陽系最大の突発的エネルギー解放現象である「太陽フレア」のうち、特に強力なイベントは、太陽黒点の周辺で生じやすいことが知られている。平成28年度の観測研究では、これらの太陽黒点が形成過程によって4つのタイプに大別できることや、タイプごとの磁気的特徴などを明らかにした。平成29年度は、大型の太陽フレアを生じやすいこれら4タイプの太陽黒点を3次元の磁気流体シミュレーションによって再現することで、フレア黒点の形成過程を理論面から研究した。その結果、磁気エネルギーを蓄積するシアした磁場構造が太陽表面上に形成されるには、太陽表面下において磁場が強くねじられたり複数の磁場が相互作用を起こす必要があることなどが明らかになった。以上の成果は英文査読論文として公表したほか、国際・国内学会で報告した。 また、平成28年度の観測研究からは、太陽フレアにともなうX線放射の継続時間(フレア継続時間)が、フレアに関与する磁場の空間スケールと高い相関を持つことも明らかになっていた。そこで平成29年度は、フレアによって磁力線が加熱され、徐々に冷却される過程を熱力学シミュレーションによって再現し、フレア継続時間と磁場スケールの相関が生じる理由についても理論的な研究を行った。成果は英文査読論文・口頭講演として報告した。 これらのシミュレーション研究は、初年度の観測データ解析研究によって明らかになった観測事実や現象を理論面から裏付ける意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、平成28年度に実施した観測研究をもとにシミュレーション研究を行い、複数の査読論文を出版することができた。観測・理論の両面から研究計画を遂行できており、「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の3年度目となる平成30年度は、平成29年9月に発生した大型の太陽フレアを対象とした研究を実施する。このフレアは現在の太陽活動周期(第24周期)で最大の勢力を持つイベントであり、複雑な太陽黒点の上空で生じたことが分かっている。本研究課題でこれまで行ってきた数値シミュレーションと観測データ解析を組み合わせて研究することで、本研究課題のまとめと総仕上げとしたい。
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Research Products
(27 results)