2017 Fiscal Year Research-status Report
複合ソリトン配位に基づく量子非摂動現象の新たな側面
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16K17677
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| Research Institution | Akita University |
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Principal Investigator |
三角 樹弘 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (80715152)
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| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| Keywords | 量子非摂動解析 / 経路積分 / Bion / 複合ソリトン / リサージェンス理論 / トランス級数 / アノマリーマッチング / クォーク閉じ込め |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では，素粒子や物性現象を記述する場の量子論において，複素化された古典解であるBion解(インスタトン-反インスタントン複合配位)に着目し，経路積分の数学的定式化とクォーク閉じ込め現象などの非摂動現象の解明に挑んでいる．本年度は，(1)2次元CPNシグマ模型におけるにリサージェンス構造の解明，(2)アノマリーマッチングに基づく閉じ込め相の理解，という2つの研究を進めた．
(1)慶應義塾大学の新田宗土教授，坂井典佑訪問教授，藤森俊明特任助教らとの共同研究において，2次元CPN模型の複素Bion解を発見した．そして，複素bion解の寄与が繰り込まれた結合定数を自然に含み，そこに表れる不定虚部が摂動級数のボレル再和に表れる不定虚部(リノーマロン不定虚部)を相殺しうることを示した．これにより場の量子論においてもリサージェンス構造が存在することが定量的に初めて示された．この結果は，2018年4月現在執筆中の論文を含む2本の研究論文で示されており，国際会議講演や解説記事執筆を数多く依頼され注目を集めている．
(2)理研BNLの谷崎佑弥研究員，京都大学/ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の菊池勇太氏らとの共同研究において，これまで格子数値計算で調べてきたZN-QCDなどの閉じ込め相構造を，トフーフトのアノマリーマッチングの現代的扱いに基づいて解析した．近年，アノマリーマッチングの手法は離散対称性を含む場合まで一般化されているが，それをコンパクト化した時空上のゲージ理論に拡張することで相構造の解析を行い，有効理論と格子計算では得られなかった知見を得ることに成功した．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究中リサージェンス理論に関係する部分は，慶應義塾大学日吉キャンパスでの平均月2回という高いペースでの研究討論に基づいており，想定以上の進み具合で研究は進捗している．特に，場の量子論におけるリサージェンス構造の解明は本研究課題全体の目標の一つであり，すでにその一部が完了していることは大きな進歩だと言える．
リサージェンス理論，アノマリーマッチングの研究ともに大きな注目を集めており，2017年9月理研-京大数理研の共同ワークショップでの招待講演(藤森)，2017年11月のカリフォルニア大学サンタバーバラ校での招待講演(坂井，谷崎)，2018年3月立教大学での国際会議の招待講演(三角)，第73回日本物理学会年次大会での企画講演(藤森)，奈良女子大学，大阪大学，金沢大学，東北大学，理化学研究所でのセミナー講演や集中講義(三角)など多くの招待講演を行っている．また，雑誌「数理科学」2017年10月号の解析記事(新田，藤森)，2018年6月出版予定の日本物理学会誌の解説記事(藤森，三角，坂井)など多くの解説記事を執筆している．2017年9月には三角が代表世話人を務める国際研究会を理研と京大数理研の共同で実施した．これらの状況から考えて，本研究の進捗状況は計画以上に進展していると判断できる．
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| Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においては，Bion解に関係する2つの研究，(1)Bion解に基づくリサージェンス構造の解明，(2)Bion閉じ込めとその相構造の解明，を進めている．以下では，この2つの課題についてそれぞれ今後の推進方策を述べる．
(1)この課題についてはすでに大きな進展を見せており，2次元場の量子論でのリサージェンス構造が解明されてきている．一方，Multi-bion解の寄与を全て含めた完全なトランス級数と厳密な結果を比較する試みは場の量子論レベルではまだ完了しておらず，量子力学極限での確認に留まっている．そこで今後は，2次元CPNシグマ模型におけるMulti-bion解を導出しその寄与を計算を進める，この計算においてはSingle-bion解の解析を拡張することが可能であり，最終年度で完了することが十分可能だと考えられる．これにより場の量子論レベルでの完全なリサージェンス構造が詳らかにされる．
(2)この研究課題について，これまで格子数値計算と解析的手法の両方を用いて研究を行ってきた．最終年度においてはこれまで準備してきたトポロジカルチャージ測定のための大規模格子計算を行い，閉じ込め相の連続性とBion閉じ込めの検証を数値的に行う．これにより，Bion配位がゲージ理論の非摂動的側面に重要な役割を果たすことが明確に示されることになる．
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