2017 Fiscal Year Research-status Report
スキン構造理解のための不安定原子核の陽子及び中性子密度分布の研究
Project/Area Number |
16K17678
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森口 哲朗 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10635890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 不安定核 / スキン / 反応断面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
不安定原子核の特徴の一つにスキン構造がある。これは原子核表面に現れる過剰の中性子もしくは陽子の層を指す。スキン構造は不安定原子核の理解にとって重要な特徴であるが、従来の方法では技術的な制限から実験的にスキン厚を測定できる不安定原子核が限られる。本研究では、スキン厚を知るための新しい手法として、固体水素と固体重水素を反応標的に用いた反応断面積測定を行い、不安定原子核の陽子密度分布と中性子密度分布を別々に導出することを目的とする。 本研究の最初のステップは本手法の妥当性を確認することである。そのために、対象核種として17Neに注目した。17Neのスキン厚は実験的に既知であるので、本手法によって得られる実験値との比較が可能である。実験は放射線医学総合研究所の重粒子線加速器HIMACを利用した。前年度はテスト実験を実施し、計測システムに問題がないこと、また、17Neのビーム量に関する情報を得た。平成29年度は、本実験として17Neの反応断面積測定を実施した。本年度の実験では固体水素標的のみを使用し、固体重水素標的を用いた実験は今後を予定している。実験によって、核子当たり100 MeV近傍における17Neの反応断面積を得た。現在、17Neのスキン厚導出のために、実験で得た反応断面積と原子核反応モデルを用いた解析を進めている。また、平成29年度は17Fの反応断面積も取得した。17Fのスキン厚は実験的に未知であるので、本手法による実験値の導出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度、固体水素標的を用いた17Neの反応断面積を測定することができた。これは本手法の妥当性を確認するためのデータを得たことになる。固体重水素を用いた実験をまだ実施していないが、まずは固体水素標的のみのデータを用いて、17Neのスキン厚の導出を試みている。また、スキン厚が未知である17Fのデータも既に一部取得した。まだ、スキン厚導出の妥当性の確認は不十分であるが、研究の進捗としてはほぼ当初の計画通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、平成29年度に得たデータを用いて、17Neのスキン厚を導出し、本手法の妥当性を確認する。データが不十分な場合は、さらに実験を行う予定である。スキン未知核の17Fに関してもデータ点を増やし、スキン厚の導出を試みる。固体重水素標的に関しては、イオンビームを用いたテスト実験も検討している。
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Causes of Carryover |
平成29年度は固体水素標的のみを用いた実験を行い、現在、その解析を優先的に進めている。そのため、固体重水素開発に必要な重水素ガスの購入がなかった。その一方で、故障した検出器の修理費や実験機器の維持費等の出費があった。これらの差分が次年度使用額として生じた。 平成30年度も数回の実験を予定しているので、実験機器の輸送費と実験期間の滞在費・旅費に充てたいと考えている。
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Research Products
(1 results)