2017 Fiscal Year Research-status Report
銀河撮像・分光、CMB観測のシナジー解析で探る宇宙のダーク成分
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16K17684
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日影 千秋 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (00623555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力レンズ / ダークマター / ダークエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
すばる望遠鏡に搭載した超広視野カメラ「ハイパーシュープリムカム(HSC)」を用いた銀河撮像観測の第一期カタログ (137平方度、計画全体の約10%)を用いて重力レンズ解析を行い、2次元、および、3次元のダークマター地図を再構築した (PASJ, Vol.70, SP1, S26)。これは宇宙のダークマター地図としては、史上最大の広さである。得られたダークマター地図は、銀河地図と強い相関があることも確かめられた。HSC第一期カタログ、重力レンズ解析に用いる銀河形状カタログの論文を発表した。本研究の一連の成果は、HSCの初期成果は、日本天文学会欧文報告(PASJ)の特集号として発刊され、東京大学、国立天文台などでプレスリリースされた。 重力レンズ観測から得られたダークマター分布や銀河分布による宇宙の密度ゆらぎ情報から宇宙論解析をする上での課題の一つは、重力成長の非線形性である。非線形な重力成長のため、ゆらぎの摂動論が適用できるスケールは大スケールのみに限られ、観測と比較するための理論模型の構築が困難になる。またゆらぎの非ガウス性が大きくなるため、2点統計量だけではゆらぎの情報を完全に引き出すことはできず、解析方法が複雑になる。そこで重力成長による質点の運動を、現在の密度ゆらぎを元に初期位置に戻すBAO再構築法について研究した。BAO再構築後の分布の非線形性を摂動論を用いて解析的に評価し、非線形性が小さくなることを示した。N体シミュレーションとの比較から摂動論がより小スケールまで適用できることを示した。また3点の統計量であるバイスペクトルの振幅が小さくなり、ゆらぎの統計がガウス統計に近づくことも示した。本結果は、Phys. Rev. Dに論文として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的である、ハイパーシュープリムカムの銀河撮像データを用いて、宇宙の3次元ダークマター地図の作成に成功した。ダークマター地図としては、現在最大のものであり、今後の観測によってさらに広領域にわたって宇宙のダークマターの構造を調べることが可能である。また得られた宇宙のダークマター分布の情報をもとに、宇宙論解析をする準備も着々と進めており、近々成果を発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、すばるハイパーシュープリムカムの銀河撮像データの重力レンズ情報をもとに宇宙論解析を行う。申請者は、宇宙大規模構造の重力レンズ効果による銀河形状のゆがみの角度パターン「コズミックシア」による宇宙論解析プロジェクトをリードしている。重力レンズから得られた宇宙のダークマター分布情報と、プランク衛星によるCMB情報を比較することで、標準的な宇宙模型であるΛCDMの妥当性をベイズ統計をもとに定量的な評価をする。またダークエネルギーの状態方程式パラメターwの制限を行い、宇宙定数(w=-1)と矛盾がないかを調べる。
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Causes of Carryover |
国内外の研究会の出張費用に関して先方からのサポートがあったため、当初の予定より支出が減り、次年度使用額が生じた。次年度は出張期間を長期間にすることで、共同研究の時間を増やし、研究を一層効率的に進めていく。
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[Journal Article] Two- and three-dimensional wide-field weak lensing mass maps from the Hyper Suprime-Cam Subaru Strategic Program S16A data2018
Author(s)
Oguri, Masamune; Miyazaki, Satoshi; Hikage, Chiaki; Mandelbaum, Rachel; Utsumi, Yousuke; Miyatake, Hironao; Takada, Masahiro; Armstrong, Robert; Bosch, James; Komiyama, Yutaka; Leauthaud, Alexie; More, Surhud; Nishizawa, Atsushi J.; Okabe, Nobuhiro; Tanaka, Masayuki
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 70
Pages: S26
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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