2016 Fiscal Year Research-status Report
X線天体の謎を解き明かす高分解能検出器を用いた水素原子中の阻止能計測
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16K17686
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
近藤 康太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主任研究員(定常) (80582593)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 原子物理 / 量子ビーム / パルスパワー / 阻止能 / 衝撃波 |
Outline of Annual Research Achievements |
HI領域(中性水素原子)から観測されるMeV級程度の宇宙線に関して,理論と観測で矛盾する点が多く残っている.これはX線天文学上の課題となっている.それらをよりよく検証するためには,水素原子中の宇宙線(粒子線)の阻止能を精度よく評価することが望まれている.本研究はよく定義された解離水素原子標的を形成することができる電磁駆動衝撃管を用い,また高分解能エネルギー検出器を開発して,解離効果を伴った水素原子中の阻止能を実験的に計測することを目的とする.
昨年度は,解離した水素原子標的の形成に向けてドライバーである電磁駆動衝撃波管および高分解能エネルギー検出器の開発を進めた.電磁駆動衝撃波管に関しては特段工夫のない同軸型電極を用いた場合,衝撃波を駆動する電流シートの方位角方向の分布に非一様性が生じ,あらかじめ封入されている水素分子ガスを解離させるために必要な衝撃波速度が得られないことがわかった.そこで,中心電極にスリーブ絶縁体を取り付けることで,軸方向と径方向に積極的な放電プラズマの形成を促し,電流シート一様性の改善が期待されることから,そのスリーブ形状を変更しながら,放電プラズマの自発光の時間変化を高速フレーミング・ストリークカメラで撮影を行った.その結果,電流シートの方位角方向の一様性および放電プラズマの軸方向の速度の改善が確認され,解離水素標的のドライバー開発の基盤を構築した.また高分解能エネルギー検出器で使用する偏向磁石の性能評価を行った.Am241からのアルファ線を用いて較正された炭素薄膜に陽子線を通過させ,エネルギー損失に伴うビームシフトを偏向磁石出口に設置されたプラスチックシンチレーターからの発光により計測した.この結果よりエネルギー損失とビームシフトとの関係が分かり,高分解能エネルギー検出器の構築の見通しを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の大きな目標であった電磁駆動衝撃波管内の一様な電流シートの形成が,当初検討していたレーザートリガーを用いた方法より簡便なスリーブ絶縁体を用いた電極構造の工夫により達成できた.これにより電流シートの軸方向の伝搬速度も向上した.この成果は国際会議で発表する予定である.標的物性の評価計測ができていない部分はあるものの,放電プラズマの自発光の伝搬速度から解離標的形成に必要な条件をほぼ達成しつつあることは評価できる.また,高分解能エネルギー検出器で使用する偏向磁石の性能評価も実施することができた.以上のことから,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
標的物性評価のために電磁駆動衝撃波管内に発生した衝撃波速度の計測を行う.標的の物性評価をするとともに,位置敏感型検出器の開発を進める.そして,解離水素原子とイオンビームとの相互作用実験を行い,解離効果を伴った水素原子中の阻止能を計測する.
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Causes of Carryover |
スリーブ絶縁体を用いた電磁駆動衝撃波管の電極構造の工夫により,電流シートの方位角方向分布の一様性および軸方向の伝搬速度の改善が達成された.そのため電流シートの一様化のために検討していたレーザートリガー方式に必要な光学部品や,電流シートの伝搬速度向上のために必要とされた高電圧キャパシタが現時点では必要ではなくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の未使用分については,標的の物性評価で必要な光学装置・光学部品に充て,高精度な解離した水素原子標的の物性評価を行っていく.また研究成果を国際会議で発表し,その研究内容を広く周知させる.
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Research Products
(1 results)