2019 Fiscal Year Research-status Report
低エネルギー普遍性と有効場の理論を用いた閾値近傍ハドロン構造の解明
Project/Area Number |
16K17694
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
兵藤 哲雄 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (60539823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハドロン分光学 / ストレンジネス / 共鳴状態 / 複合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の新たな課題について成果をあげた。 1) Dメソンは重いチャームクォークと軽いu,dクォークの束縛系であり,特にスカラーD_0*メソンは,基底状態のDメソンのカイラルパートナーとする描像がある一方,D pi散乱の共鳴状態として動的に生成されたD pi分子状態という議論もあり,その構造の理解に至っていない.D_0*メソンを記述するため,カイラルパートナー構造を導入した上でカイラル低エネルギー定理を満たす形でD pi散乱方程式を解いた上で,生成されたD_0*共鳴の性質を調べた.カイラルパートナー状態を散乱問題と結合させることで,実験で得られるD_0*メソンの性質を再現できることを明らかにした.同時に,散乱振幅の極の位置がカイラル凝縮の変化に対して非常に敏感であることから,D pi分子状態成分の寄与が重要であることを明らかにした. 2) 高エネルギー陽子・陽子衝突でのK-p相関関数は最近実験で測定され,特にK-p弾性散乱データの欠如している閾値近傍の領域で精密なデータが得られている.一方でK-pチャンネルには,低いエネルギーのチャンネルへの結合,Kbar0 nチャンネルとの閾値エネルギーのずれ,K-p間のクーロン相互作用,という要素が同時に存在し,従来議論されてきたハドロン間相関に比べ質的に異なる複雑さを有している.我々はチャンネル結合を陽に取り込み,クーロン相互作用及び閾値差を厳密に考慮した枠組みでK-p対の運動量相関関数を計算した.既存の散乱データとカイラルSU(3)動力学で構築された現実的Kbar N相互作用ポテンシャルを用い,pi Sigmaソースの重みを適切に調整することで新しく測定されたK-p相関関数のデータが再現できることを示した.さらに,相関関数のソースサイズ依存性がKbar N相互作用の決定について重要な役割を果たすことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内に予定していた研究課題2件についてはそれぞれ成果をあげ、原著論文の出版までのプロセスを順調に完了した。一方で令和2年2月、新型コロナウイルス肺炎により年度末の研究会が数件中止になったので、延長期間中に成果報告を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
主として昨年度の結果について成果報告を研究会などで行う。対面研究会の開催が困難な状況が続く場合はオンライン研究会などを利用して成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
3月に中国北京の理論物理学研究所(ITP)へ共同研究のための短期滞在を予定していたが、新型コロナウイルス肺炎の影響により先方の研究所が現在閉鎖されており、今後の復帰状況も明らかでないため滞在予定を中止した。
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