2019 Fiscal Year Annual Research Report
Coalescence of compact binary and the origin of heavy elements
Project/Area Number |
16K17706
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
関口 雄一郎 東邦大学, 理学部, 准教授 (50531779)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 元素合成 / 重力波 / 数値相対論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、大質量の中性子星連星の合体後に形成されると期待される、ブラックホールとそれを取り巻く降着円盤からなる系(BH-Disk系)の進化と、そこからの放出物質の熱力学的・化学的性質を、昨年度に開発した数値相対論的粘性を組み入れたニュートリノ輻射流体コードを用いたシミュレーションを行って調べた。この結果は、Physical Review D 101, 083029 (2020) として最近出版されている。 BH-Disk系からの放出物質に関する従来の研究では、高い中性子過剰度を持つ物質が放出され、その結果として中性子捕獲反応が効率的に進み、重元素が極めて効率的に進むことが報告されていた。これらの研究は、しかしながら、放出物質の進化を長時間追跡していない、一般相対論の効果を精確に取り入れていない、弱い相互作用による中性子過剰度の進化を考慮していない、などの問題点があった。本研究は、これらの問題点を克服して行われたはじめての研究である。 その結果、降着円盤中の物質が、ブラックホールの重力的束縛から逃れる間に、弱い相互作用の影響によって有意に中性子過剰度が下がることが明らかとなり、その結果、従来考えられていたように効率的に中性子過剰反応が進行せず、重元素の生成効率も高くないことがわかった。ただし、この結果は採用する粘性係数の値に依存するため、最終的な結論を下すためには、より定量的な年生係数の評価、あるいは、数値相対論的ニュートリノ輻射磁気流体シミュレーションを行うことが必要である。
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