2019 Fiscal Year Research-status Report
微分重力結合した素粒子模型とインフレーション宇宙の融合的研究
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16K17712
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 悠貴 群馬工業高等専門学校, 一般教科(自然), 准教授 (80644731)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 宇宙物理(理論) / 初期宇宙 / インフレーション宇宙 / 原始重力波 / 非可換ゲージ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフレーション宇宙において、非可換ゲージ場が非自明な一様等方解を持つことが知られている。このような非可換ゲージ場が存在しアクシオン場と相互作用する宇宙では、インフレーション中にスピン2を持つ揺らぎが生成される。このスピン2の揺らぎは重力波揺らぎに転換され、宇宙マイクロ波背景放射のBモード偏光成分として将来的に観測もしくはその上限値が制限されることが期待される。 本研究では、インフレーション宇宙に一様等方な非可換ゲージ場が存在すると仮定し、シフト対称性を持つスカラー場(アクシオン)の低エネルギー有効理論を考えた。このような理論においてアクシオン場が高階の微分結合を持つことにより、ポテンシャル項に依らずインフレーションを起こすことができるモデルを構築した。このモデルにおいて、アクシオン場と非可換ゲージ場の相互作用を通して重力波揺らぎが急激に生成されることを定量的に示した。この重力波揺らぎは一方のヘリシティ成分がもう一方と非対称に成長し、かつ非ガウス統計性を持つことを定量的に示した。同時に生成される曲率揺らぎのスペクトルとの割合に対する下限値が 0.5% であることを明らかにした。また、これまで無視できる程度の寄与しかしないと考えられていた重力チャーン・サイモン相互作用が、この重力波揺らぎに寄与する効果を定量的に示した。 この成果により、インフレーション宇宙における素粒子像に新たな光が当てられ、素粒子標準模型の非可換ゲージ場もしくは標準模型を超える枠組みの非可換ゲージ場が初期宇宙に果たし得る役割が明らかにされた。宇宙マイクロ波背景放射のBモード偏光成分の観測は、今後10年で飛躍的に進むことが期待されており、本研究で構築したモデルの予言値を検証することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究実施計画に基づき、インフレーション宇宙における素粒子標準模型もしくは標準模型を超えた枠組みの非可換ゲージ場の働きに関して定量的予言を与えることを目標とした。高階の微分相互作用を導入することにより、ポテンシャル項に依らないインフレーション模型を構築することに成功し、非常に興味深い定量的な結果を得た。これらの結果を2編の研究論文として発表し、1編は既に受理され、もう1編は審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上述のインフレーション模型と物質の起源に関する研究を進めていく方針である。また、研究実績を国際研究会などで広く発表する予定であるが、新型コロナ蔓延の影響で海外渡航はしばらくは困難であることが予想される。したがってオンライン研究会などで成果を発表し、対応する予定である。
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Causes of Carryover |
研究実施内容が計画よりも多少遅れたため、それに伴い計算機器の更新を遅らせたため。独マックス・プランク宇宙物理学研究所との共同研究で2019年度は一年間渡独したが、渡航滞在費の一部を別予算にて支出したため。研究期間を一年間延長したことに伴い、本格的な国際共同研究を継続させる予定である。研究成果を発表する費用、計算機器の更新と渡航滞在費などに使用する予定である。
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