2016 Fiscal Year Research-status Report
非平衡電子相関による電流揺らぎの解明とその解析手法の開発
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16K17723
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阪野 塁 東京大学, 物性研究所, 助教 (00625022)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近藤効果 / 量子ドット / 電流揺らぎ / 量子もつれ |
Outline of Annual Research Achievements |
局所フェルミ流体状態にある量子ドットの電流中に生成される、ベル相関対の起源となる散乱過程について、完全係数統計と繰り込まれた摂動論を利用することで詳しく調べた。特にベル相関を起こすチャンネル間の交換相互作用を強くしてゆくとき、エンタングルした2つの準粒子の方向が平行と反平行に散乱されるため、電流中のすべての散乱過程をまとめて取り扱う、従来の電流相関に対するベルの不等式が適用できないことが分かった。その一方で、強い交換相互作用の極限では、平行、反平行方向に散乱される準粒子の寄与が打ち消し合い、結果としz方向のスピンが0となる準粒子対のみがベル相関子に寄与し、古典相関を破るベル相関として観測されることがわかった。 SU(N)不純物アンダーソン模型の近藤状態の、不純物中の占有電子数に依存した、一重項基底状態を構成する不純物と伝導帯の電子のスピン・軌道の配置、構成について、明らかにした。また、カーボンナノチューブ量子ドットでの、軌道縮退とスピン縮退がある場合の近藤効果による、電流の磁場依存性について数値繰り込み群を用いて調べた。特に磁場はカーボンナノチューブに印加する方向によって、軌道分裂とゼーマン分裂の比が異なる。この影響を詳しく調べ、特に軌道分裂がゼーマン分裂と同じ大きさになる場合、SU(4)の半占有状態の近藤効果から、SU(2)近藤効果への遷移が観測される。実際にこの遷移は実験で観測され、ショットノイズを解析することでSU(4)の半専有状態の近藤状態の形成を詳しく明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、電流中に生成された準粒子対がつくりだすベル相関の起源について明らかにすることに成功した。また、粒子正孔対称不純物アンダーソン模型での、磁場や準位変動などの外場の影響も影響についての研究も、小さな摂動の範囲を超えて一般的なパラメーター変調として、粒子正孔非対称不純物アンダーソン模型の解析手法の開発に取り組んでおり、順調に進んでいる。この解析には当初考えていた汎関数繰り込み群に基づいた手法から、微視的フェルミ流体論を拡張した議論によって行っている。 また、実験グループとの共同研究により、カーボンナノチューブ量子ドットの近藤エネルギースケールを超えた領域での電流雑音や、超伝導接合系での電子相関効果の競合現象の解析がすすんでおり、当初の研究目的に向かって順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電流ノイズを増幅する準粒子対の性質については、これまでのベル相関の議論を発展させ、エンタングルメントエントロピーを解析する。その際、内海によって定式化された完全係数統計とエンタングルメントエントロピーの方法を使う。特にSU(2)、SU(4)アンダーソン模型の電流中の準粒子間の直接相互作用によるエンタングルメントを解析する。 また、カーボン・ナノチューブ量子ドットの解析については、粒子正孔非対称な場合のアンダーソン模型で説明される近藤状態の低エネルギー励起について、理論解析手法の開発が進展しつつある。この手法をもちいて、電流ノイズのドット準位依存性や、左右の結合の非対称な場合のアンダーソン模型についての解析をすすめる。具体的には、軌道が縮退した場合のSU(4)と、スピンのみがSU(2)の場合のについて、電流ノイズの非線形バイアス電圧応答についてドット準位依存性を明らかにする。さらに共同研究者が行っているカーボンナノチューブドットの実験のデータとの比較・検討を行う。
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Causes of Carryover |
オープンアクセス・ジャーナルへの論文の発表が遅れたため、出版のに係る費用と、その研究内容に関わる講演発表を行うための支出を次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通り、オープンアクセスジャーナルへでの論文発表のため出版費用として使用する。 また、論文発表した研究の講演旅費してして、使用する。
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Research Products
(12 results)