2016 Fiscal Year Research-status Report
極性構造を持つ金属の構造不安定性に起因した超伝導と特異な熱電特性
Project/Area Number |
16K17736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 英史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50748473)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 極性金属 / 超伝導 / 圧力効果 / 半金属 / 層状遷移金属カルコゲナイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、極性‐非極性構造相転移を持つ層状遷移金属ダイカルコゲナイドMoTe2における構造相転移温度の制御と、極性構造の不安定性と特異な超伝導や熱電物性との相関について明らかにすることである。本年度は(1)圧力と化学置換により構造相転移温度を制御した場合での超伝導物性と(2)圧力下での熱電物性の測定を行った。以下に主な結果を示す。 (1) 超伝導の圧力効果は化学輸送法で作製した大型単結晶を用い測定を行った。化学置換効果はTeをSeに置換した多結晶試料を用い測定を行った。構造相転移温度は圧力を印加することで急激に減少し、0.75GPaで消失する。一方で化学置換では、構造相転移温度はほとんど変化しないが、5%程度の置換で構造相転移は消失する。また、超伝導転移温度は圧力効果と置換効果ともに構造相転移の消失に伴い急激に増大することを明らかにした。この結果から構造相転移温度は結晶の積層方向(c軸)の縮小に対して敏感であり、この積層方向の縮小と構造相転移による結晶構造の対称性の変化に伴い超伝導転移温度が上昇したことが示唆された。 (2) 熱電物性の圧力効果はNaClフラックスにより作成した高純度単結晶を用い測定した。NaClフラックスを用いることで、化学輸送法に比べ5倍程度電気抵抗率のRRRが高くなる。そして、圧力を加えることで、50K以下での電気抵抗はほとんど変化しないが、ゼーベック係数が構造相転移の臨界圧力付近において0GPaに比べ2倍程度増大することを明らかにした。この結果、熱電性能の指標である出力因子が極めて高い値を示すことを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、極性‐非極性構造相転移と超伝導転移温度の相関について、圧力と化学置換によって明らかにし、この結果について論文にまとめ報告している。さらに、NaClフラックス法により高純度な単結晶の合成に成功し、その熱電性能の圧力効果を測定することで、構造相転移の臨界圧力において極めて高い出力因子の観測に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでおり、今後は構造相転移の臨界圧力で観測される高い出力因子の起源を明らかにするため、圧力下での磁気ゼーベック効果やネルンスト効果およびホール効果の測定を行い基礎物性を明らかにする。また、新たな極性ー非極性構造相転移を示す物質を開拓し、その熱電物性の評価を行う。
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