2016 Fiscal Year Research-status Report
中性子散乱による重い電子系セリウム化合物における磁性と超伝導の共存競合問題の研究
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16K17740
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 陽一 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40581773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁性 / 超伝導 / 圧力 / 中性子回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
重い電子系化合物CeNiGe3は、これまでの重い電子超伝導体とは一風変わった温度圧力相図を示す。この物質では、従来の様に反強磁性量子臨界点の近傍で圧力誘起超伝導を示すが、それに加えて、量子臨界点から離れた反強磁性相内でも非従来型超伝導が発現する。さらに、後者の超伝導相は、加圧によって反強磁性相が別の磁気相へと相転移すると同時に消失する。本研究は、超伝導と共存する低圧力領域の反強磁性相1 と、超伝導と競合する高圧力領域の反強磁性相2 の違いを、圧力下中性子散乱実験等により解明することを目的とする。さらに、試料体積に制限がある高圧力下中性子回折実験において、1 uB/Ce 以下の小さな磁気信号を検出する実験的なノウハウを確立し、重い電子系の磁性と超伝導の共存・競合の問題に対して、ユニークかつ価値のある情報を与えることを目的とする。 本年度は、主として圧力下中性子実験用の圧力セルの開発を行った。中性子実験に適した圧力セルを作成するために、中性子透過率等を考慮した圧力セルの材料選別を行い、また、加圧時の応力集中箇所を有限要素法により解析することで、圧力セルの形状の最適化を進めた。重い電子系の圧力下磁性相の研究には、5万気圧程度の圧力環境と同時に、希釈冷凍機温度程度の極低温環境を必要とする。そのため、圧力セルを可能な限り小型化した。これら圧力セルの開発と並行して、発生圧力を較正する為に、ルビー蛍光圧力モニタシステムの導入と立ち上げを行った。平成29年度は、作成した圧力セルの加圧試験を行い、圧力セル形状等の最適化や圧力発生効率の向上を推し進める。また、大強度陽子加速器研究施設J-PARCにおいて、中性子実験(課題番号2017A0147)を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた形状(大きさ)の圧力セル用の材料を調達するために、数百万円程度の費用が必要であることが、圧力セルの設計を終えた後、業者に発注する際に明らかになった。その為、設計段階からやり直す必要が生じ、圧力セルの作成が遅れた。これに関しては、申請者本人と業者双方に落ち度があったため、これ以後は、より綿密な打ち合わせを行うことで、遅滞が無いようにしている。現在、圧力セルの作成は完了しており、平成29年度初めより、加圧試験を実施する予定である。 その他の進捗状況については、良好と判断している。圧力較正用のルビー蛍光圧力モニタシステムは、予定通りに、平成28年中に導入と立ち上げを為し遂げた。また、中性子実験を実施するためには、公募に応募し、マシンタイムを確保する必要があるが、これに関しては、大強度陽子加速器研究施設J-PARCの公募に申請した課題(課題番号2017A0147)が、無事採択された。よって、平成29年度(11月5日から8日)に予定通り、実験を行えることになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
やや遅滞があったものの圧力セルの作成が完了したため、年度初めより、加圧試験を進める。実験用の単結晶試料は既に準備できているため、中性子実験までの期間は、圧力セルの性能確認などに費やすことが出来る。中性子実験が11月5日から予定されているため、それまでの間は、加圧試験を繰り返し、性能の確認に加えて、圧力発生効率を高めるために、圧力セル形状等の見直しと最適化を行う予定である。また、J-PARCでの実験に備えて、リスクアセスメント等必要な手続きを進める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた形状(大きさ)の圧力セル用の材料を調達するために、数百万円程度の費用が必要であることが、圧力セルの設計を終えた後、業者に発注する段階で明らかになった。その為、設計段階からやり直す必要が生じ、圧力セルの作成が遅れた。作成自体は、平成28年中に行ったが、業者からの納品が、平成29年4月中旬となったため、本来、圧力セル作成のために使用予定であった助成金が、平成28年中に使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用できなかった分は、圧力セル作成のために、平成29年度に使用予定である。圧力セルは4月中旬に納品予定である。
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Remarks |
一部の研究内容は所属研究室HP(http://qblab.imr.tohoku.ac.jp/)にて公開中。 研究成果については、現在作成中であるが、同HPで公開予定。
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Research Products
(1 results)