2016 Fiscal Year Research-status Report
キャリアドープされたハニカム格子ハバード模型の磁性と新奇超伝導の理論
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16K17754
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
相澤 啓仁 神奈川大学, 工学部, 助教 (90586231)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 物性物理 / 磁性 / 超伝導 / ハニカム格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画初年度では、ハニカム格子ハバード模型に二粒子自己無撞着(TPSC)法を適用することで、キャリアドープに対する磁性と超伝導の振る舞いに関する全体的な把握を行った。磁性については、ストーナー因子の温度依存性を可能な限り低温領域まで計算し、高温領域から外挿することで磁気転移温度の見積もりを行った。超伝導については、異なる超伝導状態の競合に対するキャリアドープの影響を調べた。 まず、先行研究が豊富な1/2フィリングの状態について解析し、オンサイト相互作用と温度空間での磁気相図を求めた。先行研究では、基底状態における常磁性-反強磁性転移の臨界相互作用が様々な計算手法で評価されており、本研究で得られた臨界相互作用もそれらと整合する値が得られた。これを踏まえ、1/2フィリングからキャリアドープした状態で解析したところ、磁性状態は著しく抑えられることがわかった。次に、van Hove特異点があるエネルギー領域周辺での磁性を解析した。フェルミ準位がちょどvan Hove特異点にある場合、相互作用が小さくとも低温で磁気転移し得ることがわかった。ただし、この結果は外挿で得られているため、今後の検証が必要と考える。キャリアドープによりvan Hove特異点からフェルミ準位がずれた状態では、ドープ量に応じて磁気転移温度が緩やかに減少することが示された。 超伝導については、温度一定の下でいくつかの超伝導状態の競合を調べた。その結果、磁気転移近傍で新奇な超伝導状態が発達し得る傾向を見出した。ただし、この振る舞いは超伝導転移温度よりも高い温度での結果であるため、今後、これらの温度依存性について検証が必要と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画初年度の予定通り、ハニカム格子ハバード模型における磁性や超伝導のTPSC解析を行うことができている。ストーナー因子の温度依存性から評価された磁気相図は、キャリアドープ量と相互作用の空間で得られている。超伝導転移温度以上の温度領域ではあるが、超伝導の競合に関するキャリアドープ量依存性も得られている。これらから、総合的にみて、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
磁性や超伝導の振る舞いに関する微視的な観点からの知見を得るために、現在、準粒子スペクトルの計算準備に着手している。また、ハニカム格子で得られた結果との比較のために、他の格子(正方格子など)での解析を予定している。新奇超伝導状態の安定性に関する検証を継続し、場合によっては、ハニカム格子への追加的な効果が及ぼす影響を検討する。
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Causes of Carryover |
計算機の導入に際して、必要な性能と動作の確認に遅延が生じたため。 国内学会などでの研究成果発表の機会が当初想定よりも少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要な性能や動作の確認が取れたので、計算機の導入を行う予定である。 国際会議などでの研究成果発表の旅費として用いる予定である。
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