2017 Fiscal Year Research-status Report
トポロジカル超伝導におけるマヨラナ準粒子の検出と制御に向けた微視的理論研究
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16K17755
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 拓人 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD) (00750895)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジカル半金属 / トポロジカル超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に引き続き、トポロジカルノード線半金属状態の実現メカニズムと新物質提案に向けた研究を実施した。前年度までの成果によって、Oh対称性のある面心立方格子系においては、ブリルアンゾーン(BZ)の境界近傍においてW点をつなぐノード線が現れることを明らかにしてきた。Oh対称系においては、3次元既約表現に属するp軌道あるいはd軌道が、鏡映に対するパリティが違う鏡映対称面において相互作用しない2グループにわけられる。それに加え、2グループに属するバンドの交差が離散回転対称性によって保証されているためにこのようなノード線が現れる。しかしながら、これらの3つの軌道は点群の同一既約表現に属するために、BZの中心で3重縮退する。この縮退に伴ってBZ中心近傍では、ノード線のエネルギー準位に、ノード線以外のバンドが現れる。そのため、3バンドだけでは、ノード線に起因する物性を引き出すことは困難であった。 この問題を解決するために、一般的なメカニズムに加えて種々の面心立方格子系の解析を行った。その結果、シリコンなどの誘電体球を面心立方格子状に配置したフォトニック結晶で、周波数的に孤立したノード線が実現することが判明した。フォトニック結晶には、ノード線を形成するp軌道やd軌道などに加え、BZ中心から急激に立ち上がるディラックコーンが存在する。本研究では群論の立場から、このディラックコーンがBZ中心近傍にあるノード線以外のバンドと強く混ざり合うことを明らかにした。その結果、BZ中心付近の望ましくないバンドを排除できることが判明した。同様のメカニズムで、誘電体球だけでなく、誘電体ロッドを用いた面心立方系でもエネルギー的に孤立したノード線が実現することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノード線半金属は、そのトポロジカル特性としてほとんど平坦な分散をもつ表面状態を持つ。平坦バンドでは状態密度が極めて大きくなるため、転移温度の高い超伝導を実現するために利用できる可能性がある。フォトニック系でほとんど平坦分散、つまり群速度の遅い状況が実現すれば、多くの応用が期待されるスローライトの実現に役立つと考えられる。加えて、本年度の成果として明らかになった、孤立したノード線は、これからノード線半金属を実験的に検証するために重要な役割を果たす。上述のメカニズムは、固体電子系のノード線半金属においても、ノード線とそれ以外のバンドを分離するための基盤となる知見である。 さらに本年度、前年度から行ってきたノード線半金属の研究成果をまとめた論文を出版した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、新奇なトポロジカル超伝導の量子渦におけるマヨラナ準粒子の研究に着手する予定である。近年注目されているトポロジカル物質の一つに逆ペロブスカイト酸化物がある. この系ではスピンと軌道の結合により、1/2よりも大きな有効スピンをもつ電子が実現し、それに伴って大きな巻付き数を持つトポロジカル超伝導が存在することが明らかになってきた。特に1以上の巻付き数を保つ場合、トポロジカル超伝導体表面には複数のマヨラナ型分散が現れる。そこで本研究では、この系の量子渦に着目し、大きな巻付き数を持つ場合、どのようなマヨラナ準粒子が現れるかを理論的に探索する。さらに、逆ペロブスカイト物質の持つバンド分散やギャップの異方性に起因して渦芯の状態密度がどのような実空間パターンを持つかを調べる。
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Research Products
(7 results)