2016 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属水素化物におけるヒドリド結合状態の磁性・伝導性への影響
Project/Area Number |
16K17759
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
本田 孝志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (70735745)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁性 / 酸水素化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、強誘電体や鉄系超伝導体といった酸化物にヒドリド(水素陰イオン)を置換した酸水素化物に対する研究が注目を集めている。本研究では、水素の結合状態の二面性(イオン結合性、共有結合性)に着目し、酸水素化物において水素置換濃度を変化させることで水素との結合長を制御し、水素のイオン結合性、共有結合性を調整することで新奇物性探索を行っている。 当該年度ではペロブスカイト型カルシウムニッケル酸化物を対象に、元素置換試料での合成方法の構築に成功し、合成した試料を用いて基礎物性測定実験(磁化率測定)を行った。低温においてこれまで報告のなかった磁気相転移点を発見し、当該物質はすでに強誘電体であることが報告されていることからマルチフェロイック物質(強的秩序が2つ以上同時に存在する系)であることが示唆される。新規磁気相であることからJ-PARC MLFの高強度全散乱装置(NOVA)を用いて中性子線回折実験を行い、磁気構造解析を行った。 また、試料合成時に水素源を含めた仕込み比制御による水素下アニールによる試料合成も行っており、水素の有無を含め現在評価を行っている。試料合成実験は研究協力先である東北大学金属材料研究所 折茂研究室にて行った。当該物質は強誘電体でもあるので、ヒドリドによる誘電特性への影響をも評価することで、磁性だけでなく誘電特性への寄与を同時に考察し試料合成へとフィードバックすることが可能となり、物性物理分野への新たな研究指針となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特許等で報告されていた合成法では化学反応せず、単相試料の作製できないことが試行錯誤から判明し、合成法を模索するのに時間を有した。元素置換物質の合成条件の決定を行い、磁化率といった物性測定の結果から当該物質において水素下アニールを行い、現状に至る。
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Strategy for Future Research Activity |
合成済みの遷移金属水素化物に関しては取り扱いが非常に難しく、発熱・発火といった危険性や測定準備過程における酸化があるため、合成済み水素化物の取り扱いはせず、対象酸化物を水素置換によって水素化する手法を取る。 今後は水素量の見積もり及び水素の置換サイトの決定を行う。また置換カルシウムニッケル水素化物の試料合成及び基礎物性測定を行う。 他のペロブスカイト型強誘電体においても水素下アニールをしており、同様の評価及び水素量制御を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度では小額消耗品や旅費に関する予算援助が別途生じたため、次年度での予算使用により高額測定機器の購入を計画した(詳細は下記の使用計画に記す)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで他大学に出張し基礎物性測定を行っていたが、当該年度において所属研究機関でも行えるように測定システムを構築することができた。しかし現状として物性測定に必要不可欠な高額測定機器がないため、購入する。
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