2018 Fiscal Year Annual Research Report
What makes a phase transition genuinely quantum?-Numerical study of deconfined excitations-
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16K17762
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
諏訪 秀麿 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60735926)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脱閉じ込め / 量子臨界 / スピノン / 分数励起 / 量子モンテカルロ / スペクトル / 対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
統計力学では、本質的に多自由度であることにより創発する、相転移や臨界現象がひとつの重要なテーマである。相転移の基礎理論として、秩序変数に関する展開に基づいた(古典的な)ランダウ理論が確立されており、多くの量子相転移についてもうまく説明する。一方、古典的理論の範疇を超える「量子的」な相転移として、近年、脱閉じ込め転移が注目されている。ここで量子的とは、ベリー位相等の効果により、素朴には対応する古典系が存在しないという意味である。この転移点では、閉じ込めを脱した分数励起や非自明な保存量が理論的に予言されている。本課題では、2次元量子スピン系に対して経路積分量子モンテカルロ法を用い、新しい計算手法を開発しつつ、脱閉じ込め臨界における励起を数値的に調べた。 本研究では計算手法開発も重要な要素である。我々は励起エネルギーを高精度で見積もる計算法を開発し、量子モンテカルロ法によるエネルギーギャップ解析を確立させた。最終年度では、これまであまり注目されてこなかった高エネルギーの励起状態を求める手法を開発した。これらと同時進行で、モンテカルロ法における新しい状態更新法を提案し、手法の効率を大幅に向上させた。 これらの手法を武器として、スピンの2次と4次相互作用を持つJ-Q模型を用いて脱閉じ込め臨界を解析した。その結果、スピン1/2を持つスピノン励起の線形分散関係と励起速度を明らかにした。またスピノンの脱閉じ込めと整合する高エネルギーの非自明なレベル秩序を見出した。さらに転移点でハミルトニアンの持つ対称性より高い対称性が創発することを示唆する結果を得た。これは脱閉じ込め量子臨界理論の修正をせまる重要な発見である。 本研究は相転移の基礎理論を超える臨界現象における励起状態を明らかにした点で、統計力学と物性物理の発展に大きく貢献する。今後非自明な対称性の創発等に関するさらなる研究が必要であろう。
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Research Products
(1 results)