2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17764
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新山 友暁 金沢大学, 機械工学系, 助教 (00583858)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己組織化臨界 / 塑性変形 / 結晶 / アモルファス固体 / 転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、固体の塑性変形現象に内在する非平衡臨界挙動に対して、分子動力学シミュレーションをもちいた解析を行った。また、単結晶塑性との比較対象として亀裂進展挙動の臨界性についてのシミュレーションを行うとともに、粒界と転位の相互作用についての解析も行った。 アモルファス固体塑性は原子の局所的な再配置運動によって引き起こされ、雪崩的に伝播することが知られているが、その伝播特性が熱的構造緩和に依存することを明らかにした。とくに、構造緩和した系での局所再配置運動は、外部負荷方向に沿って伝播する傾向があった。このことは、内部構造や素過程が等方的であることを示唆している。さらに、結晶に比べ臨界挙動が明確にあらわれる傾向があり、結晶の臨界塑性の解析に有効なリファレンスとなりうることがわかった。 結晶の塑性挙動においては、大規模な塑性変形イベントの直後に規則的な応力の振動を認めた。これは転位が弦のように振動することによるもので、アモルファス固体にない結晶塑性特有の挙動であることがわかった。この挙動は個別の塑性イベント検出の阻害要因となる、対策が必要となった。これに対して、該当する時間領域でのポテンシャルエネルギーはこの転位挙動を反映しておらず、イベント抽出のための動的物理量として応力値よりも適していることがわかった。 fcc 構造結晶に加えて hcp 構造結晶の臨界的な塑性挙動について、単結晶 Mg モデルに対して、単滑り系での臨界的な塑性挙動を再現することを試みた。せん断変形を用いることで底面滑りのみを起動できることが確かめられたが、塑性発生時に対生成した転位が周期境界条件によって対消滅するため、転位の準安定構造は生まれず、塑性挙動は規則的になった。このことから、原子配置に何らかの不規則性を導入するか、初期転位を人為的に導入するなどの対応が必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はアモルファス固体塑性の臨界挙動についての解析に相対的に多くの時間を費やしたが、この解析結果を基準にすることで結晶塑性の解析の方向性を見定めることができた。とくに、固体塑性の臨界挙動を特徴付ける動的物理量の選定に目処がつき、解析条件についてもせん断変形条件の有用性が確かめられた。とくに、固体塑性の臨界挙動を特徴付ける動的物理量、なかでも塑性イベントの抽出にはポテンシャルエネルギー(弾性ひずみエネルギー)が有効であることがわかった。また hcp 構造結晶の塑性変形シミュレーションについても知見がえられたため、計画全体としておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果にもとづき、各種の結晶材料の臨界的な塑性挙動の特徴を比較していく。この際、ポテンシャルエネルギーの変動量に注目し臨界挙動を捉え、このエネルギー変動を指標にして塑性イベントを抽出し、変形領域を特定する。同時にイベント持続時間をはじめとする時間量とともにスケーリング関係を調べる。hcp 構造結晶については、臨界挙動を定常的に再現するような初期配置について検討する。とくに、転位集団が対消滅しないような初期原子配置を使用することで、hcp 結晶の臨界的な塑性挙動を再現することを試みる。適切な条件が設定できた場合は fcc 構造結晶との比較を行っていく。
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Causes of Carryover |
経費は当初計画に沿って使用されたが、使用品目の組み合わせ上、少額であるが残額が0円とはならなかった。
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Research Products
(11 results)