2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17767
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
花田 康高 九州産業大学, 理工学部, 助手 (50773561)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トンネル効果 / 量子カオス / 半古典論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,おおむね研究計画通りに実施し,(i)離散時間写像系及び(ii)2次元自励ハミルトン系で,対称井戸間のトンネル確率(トンネル分裂)が非可積分パラメーターに対して増大する現象の研究を進めた.一方,一般複素行列の対角化ライブラーEISPACKの任意精度拡張を予定していたが,所属替えに伴う計算機資源や開発環境の変化から実施には至らなかった. (i-1)離散時間写像系ではエノン写像および,標準写像を用いてトンネル効果によるトーラス間遷移の摂動強度依存性について任意精度数値評価をおこなった.その結果,セパラトリックスを超えて伝搬するトンネル振幅は,Melnikov積分を想起させる真性特異的なパラメーター依存性を示すことが明らかになった.研究成果は,2018年7月に学術論文としてPhysical Review E(米国物理学会)へ投稿し,査読の結果,2019年度にレギュラージャーナルとして刊行される. (i-2)トンネル効果の増大現象に関する先行研究であるchaos-assisted tunneling 及びresonance-assisted tunnelingと,本研究成果で見出されたセパラトリックスを超える遷移との関係を明らかにする研究を進めた.その結果,既存の先行研究では原理的に説明不可能な現象であることを明らかにした.先行研究との関係を精密に注意深く議論する必要があるため,執筆に時間を掛けているが,2019年初夏頃までに論文投稿する予定である. (ii)2次元自励ハミルトン系では,共同研究者らと協力して解析を進め,レベルダイナミクスの観点からアプローチすることによって,離散時間写像系と同様にセパラトリックスを超えるレベル間相互作用が重要であることが明らかになりつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究実施計画に基づき,離散時間写像系および2次元自励ハミルトニアン系の解析を進めた.特に,離散時間写像系に関して先行研究との関係が明らかになったこと,2次元自励ハミルトン系に関する研究が予定通り開始することが出来た事を理由に,概ね順調に進展していると評価した.だだし,2次元自励ハミルトン系と離散時間写像系におけるトンネル確率の増大の起源が同根であるか,また,その半古典的起源に関する明確な答えを見出す事まで達していない.故に,おおむね順調であるものの,当初の計画以上に研究を進展させるに至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況は概ね順調に計画通りに進行しているが,期待した以上の成果が得られたわけではない.特に2次元自励ハミルトン系と離散時間写像系の関係を更に深く議論するために,1次元系に時間連続摂動を印加した1.5自由度系の研究が不可避であることが分かった.最終年度は,多次元トンネル確率増大機構の応用可能性について研究を進める予定であったが,離散時間写像系,1.5自由度系,2自由度自励ハミルトン系におけるトンネル現象に共通の普遍的性質を明らかにすることを目標に,基礎的研究を進める予定である.
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Causes of Carryover |
2018年から所属変更に伴い,学内における研究経費を利用することが可能となった為当初の予定より支出が相対的に減額した.一方,利用可能な計算機資源が大幅に減ってしまったので,ハードディスクやDRAM等の購入に当てる予定である.
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Research Products
(2 results)