2016 Fiscal Year Research-status Report
多自由度効果-多体効果を取り入れた有限温度BECの理論構築
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16K17774
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
渡部 昌平 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 助教 (90726895)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ボース・アインシュタイン凝縮 / 多体効果 / 多自由度効果 / 有限温度効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多自由度効果-多体効果を取り入れた有限温度BECの理論構築を目標とする.今年度は,多体効果を取り入れた有限温度BECについて研究を行った.超流動液体ヘリウムでは,rotonやmaxonの状態密度が異常に大きいためそれらの散乱効果や束縛状態といった多粒子励起状態が密度応答関数に大きな影響を及ぼす.一方,冷却原子気体の原子のBECやmagnonなどの準粒子のBECではこれらのrotonやmaxonがないため,従来の考え方では多粒子励起状態は効いてこないと予想される.しかしながら,本研究ではその予想を覆し,多体効果を含んだ媒質中での凝縮体と準粒子の相互作用効果によって,1粒子励起スペクトルと密度応答関数に多粒子励起状態の効果が現れることを明らかにした.また,有限温度における1粒子励起と密度応答関数のスペクトルの関係を数値計算で議論した.極低温ではそれらのスペクトル関数のピークが,絶対零度で知られているるように一致するが,温度が上昇し転移温度に近づくにつれ,凝縮体密度の減少により1粒子励起と集団励起の混合が弱くなり,その一致性がなくなることを明らかにした.これらの結果はアメリカ物理学会でも発表し,現在論文を投稿中である. 多自由度効果に関しては,内部自由度を持つBECに対して成立する厳密な関係式の導出に注力し,現在その1つに関して導出をほぼ終えた状況である.また,実際の物理系への適用も進めており,論文を執筆している最中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多体効果を取り入れた有限温度BECについて計算結果を考察することで,当初予期していた以上に新たな切り口が見えた.また,多自由度効果と多体効果を入れた有限温度BECの理論構築において,当初は近似理論の枠組みを作る予定であったが,研究を進める中で当初予期していなかった厳密な恒等式を導出する着想を得た.これらの観点からみれば研究は予想以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
多自由度効果を取り入れた理論の構築を今後二つの柱で進めていく.一つは近似理論の枠組みの構築であり,もう一つは厳密な関係式の導出である.一つ目の近似理論の構築は,ボトムアップ形式の見通しは立っているが未完成である.それらを整備すると同時に,汎関数経路積分によりトップダウン形式でも理論形式を整備し,理論の精密化を行う.また,厳密な関係式の導出については証明の最後の詰めを行い,さらなる拡張を行いたい.
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Causes of Carryover |
当初予定したよりも物品費と旅費が高くなったが,その分,予定していた英文校閲に対する費用を削減し節約することで,当初よりも全体の支出がかえって少なくなったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究に必要な物品の購入,または研究成果を発表するための旅費として使用する予定である.
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