2016 Fiscal Year Research-status Report
液晶の電気流体力学現象がもたらす特異なコロイド結晶構造の研究
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16K17776
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 裕司 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00649741)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶 / コロイド / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イオンを僅かに加えた液晶材料を利用し、コロイドの凝集構造を作成することを狙いとしている。主に二つの効果を得ることを期待してイオンを添加する。一つ目は、交流電圧を印加によって、液晶の流れを引き起こし、コロイドをランダムに動かすことである。二つ目は、粒子を分極させ、電気的相互作用を粒子間に誘起することである。液晶の中にコロイド粒子を分散させる場合、配向場の歪みに起因した弾性的な相互作用による凝集構造が有名であるが、本研究では先に電気的な凝集構造を作り出し、そこに現れる欠陥の様子を調べる。 本年度はコロイド粒子、液晶、配向膜などを様々に変化させ実験条件の検討を行った。実験条件の選定の過程で、フッ素系の高分子を配向膜として使用した際に、液晶の特異なパターン形成を見出した。これはトポロジカル欠陥が格子状に配列したものである。詳しく調べた結果、配向膜の高い絶縁性が重要な役割を果たしていることが明らかになった。閉じ込められたイオンはセル内部で周期的に分布し、結果として配向場のパターン形成を誘起することが分かった。さらにこの系に対して、光マニピュレーションなどの適用が有効であることを示した。 コロイド粒子については、電気的に三次元のコロイド結晶構造を作り出すことに成功している。基本となる二つの粒子の相互作用について実験的検証を行った結果、電場を印加しないときの粒子の周りのトポロジーの記憶が、電場によって結合したコロイド二量体にも残ることを見出した。一様な凝集構造を広範囲に渡って作成することを目指して実験が行われた。電場のみでは凝集構造の拡大は困難が伴っているが、適切な外場を与えた場合に、比較的大きなコロイド結晶構造が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、適切な実験条件の探索を行い、その過程で、イオンを混合したことによる新規な現象を見出すことができた。この結果については更なる研究の進展が見込まれる。粒子の凝集構造の研究についても、実験的側面からは従来の液晶コロイドの研究結果とは質的に異なる結果が得られている。引き続き実験を進めることで、目的は達成できると思われる。総合的にみて新規な情報が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
少数のコロイドの相互作用の理解と、多数の粒子の凝集構造の作成を目指してそれぞれ実験を進めていく予定である。コロイド二量体の場合については実験的な情報は得られているため、周囲の配向場について調べる。また交流電気泳動との関連を調べる。電圧の印加によって様々な凝集構造を作り出すことに成功したが、その一方で、電圧のみでは広範囲にわたって一様なドメインを得ることが難しいことも分かりつつある。そのため、電圧印加以外の手法を積極的に組み合わせることで、実験結果の改善について検討する。さらに、別の手法を組み合わせた際の効果と、その物理的な要因について明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験に必要な条件がおおよそ決まり、今年度の必要な消耗品は十分に揃えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬、ガラス等の消耗品を実験の進捗状況に応じて購入するために使用する。
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Research Products
(7 results)