2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17780
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 創祐 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (00771221)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報幾何 / 酵素反応 / 熱力学 / 情報熱力学 / 不確定性関係 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は, 主に本研究課題の研究の方向性を押し広げる研究を行うことができたと考えている。特に大きな成果として, Master方程式で記述される確率的な生化学反応を情報幾何上の運動とみなし, 情報幾何における幾何学的な量と熱力学量と関係づけるという成果を出すことができた。本研究によって、確率過程で記述されるような生体シグナル伝達系や酵素反応系などにおいて, 情報幾何における幾何学的な量を熱力学的なコストとして解釈できることを明らかにできた。またその結果として、幾何学的な不等式から熱力学的不確定性関係を導出し、化学反応によって状態変化する際に速度と熱コストがトレードオフ関係にあることが示すことができた。この結果により、生化学シグナル伝達における情報伝達と熱力学的なトレードオフを, 情報幾何的な幾何学上の関係としてみなすことができるようになった。
この研究自体は, 生化学系の情報伝達と情報熱力学の関係を明らかにするという本研究課題のテーマにおいて、非常に重要な位置付けを占める内容である。この研究自体は研究計画の段階では想像していなかった成果あるが、本研究課題において達成できた特筆すべき成果だと考えている。 この熱力学と情報幾何の関係は今後も発展可能だと考えており, 昨年度まで進めていた体内時計などのシグナル伝達系の情報熱力学の研究により接近した内容への拡張が期待される。
また, 昨年度までに行っていた研究である情報熱力学とシグナル伝達系や体内時計の研究も引き続き行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、酵素反応系に適用可能な情報幾何と熱力学の関係について精力的に研究を行った。この結果自体は、本研究テーマに関連性の高い結果であるため, 研究課題に関する進展は十分にあると考えている。 一方で当初計画していた研究テーマに関しては、なかなか思い通りに研究を進められる環境が現環境では整っておらず、昨年度に期待していたほどの結果が挙げられていない。 よって、研究そのものは順調に進んでいるものの、当初考えていた研究の方向性からは逸脱をしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の元々の計画に沿ったテーマに関する研究は、現在遅延気味である。よって, 来年度はある程度方向修正を施した上で、すでに得られている結果を出版まで持っていきたいと考えている。 また今年度得られた結果である情報幾何と熱力学の関係は非常に発展性のあるテーマであり、本研究課題にとっても重要性が高いと考えているため、引き続き発展させる形で本研究課題に寄与させていきたい。
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