2017 Fiscal Year Research-status Report
キラリティーが支配する両親媒性分子の自己組織化過程の光第二高調波顕微像観察
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16K17786
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
宮内 良広 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (70467124)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | H会合形成 / 双極子双極子相互作用 / Langmuir-Blodgget膜 / 光第二高調波発生 / シアニン色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リン脂質等のキラルドメイン生成過程の解明を目標として、気液界面におけるキラル分子のSHG分光法、SHG顕微法による観測を行っている。当初計画通り、脂質分子と色素分子を混合し、水面上に展開して、色素分子の配向変化等の観測を通してキラルドメイン形成過程の解明を目指している。 本年度は成膜中のシアニン色素分子(DiO)の形成過程を下記の様に観測し、キラル分子がない場合の配向変化を光第二向調波発生(SHG)信号のin-situ観測行うことにより詳細に調べた。まず、DiOを超純水上に展開し、π(圧力)-A(単一分子が占める面積)曲線を取得した。そのπ-A曲線では面積Aが減少するにつれ、圧力が増加し、特異点(kink point)が生じてプラトー領域となった。この曲線はLiquid expand (LE)-Liquid condensed(LC)相間の相転移があることを示している。次に、この圧縮に伴うLB膜からのSHG信号の変化を観測した。入射基本光の偏光がp偏光、出射SHG光の偏光がp偏光であるとき(以下、PinPoutと略す)、あるいはPinPout, SinPout, MinSout(Mは入射基本光の偏光角がpとs偏光の中間である45°であることを意味する)の偏光においてLB膜からのSHG信号はそれぞれ異なる応答を示すことが分かった。特にSinPoutの偏光ではプラトー領域までSHG信号が増加し、その後一度減少し、再び増加していることが分かった。さらにSHG信号比を解析したところ、圧縮過程に伴う分子配向はLC相の最後までに約5°減少することが分かった。配向角の減少により密な成膜が可能となり、このためLC相でH会合体形成が促進したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
両親媒性キラル分子と混合する予定であるシアニン色素の配向変化を明瞭に捉えることができ、研究計画の一部分ではあるものの、下記の様に独立した成果を得ることができた。この成果はキラルドメイン形成過程のためのユニークな観測手法へ繋がる可能性もあり、それ故進捗状況としては概ね順調であると判断する。 シアニン色素は配向変化が乏しく、H会合形成がおきにくいということが先行研究として知られていたが、本研究で用いたシアニン色素DiOはLC相の圧縮過程で一量体、H会合体の配向変化が観測され、またH会合形成過程が推進されることが分かった。また、SHG法で観測した一量体とH会合体の配向変化も明瞭に異なっており、当初予想されていた以上にシアニン色素自体の圧縮過程が複雑であることが分かった。 一方、SHG顕微鏡の改良を行い、特に用いた光学素子の反射率等の光学特性を校正し、顕微分光観測が可能となる様に一新した。このSHG顕微鏡を用いて単層のLB膜と同様の2次元材料である単層遷移金属カルコゲナイド半導体(TX2: T=Mo,W, X=S, Se2)のSHGスペクトル(2.4~3.3eV)を取得した。また、線形反射分光による結果と比較したところ、Γ点近傍のバンドネスティング領域における光学遷移を反映していることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果であるシアニン色素(DiO)の単分子膜生成過程の観測結果を参考データとして利用し、DiOとR体またはL体のリン脂質(DPPC)を混合し、リン脂質との静電的な相互作用によって生じるDiOの分子配向変化をIn-situ SHG法で追跡し、それに伴うキラルドメイン形成過程をSHG顕微法で観測する。 まず、SHG観測としては円偏光を利用し、分子レベルのキラリティに応じた信号を観測を試み、その信号応答が得られれば、それらの強度分布をSHG顕微法を用いて取得し、キラルドメイン成膜過程における分子キラリティの影響を理解する。次に成膜過程の詳細を理解する為に、色素分子の配向変化にも着目する。具体的にはDPPCと微量のDiOの混合膜形成過程において一量体とH会合体のそれぞれのSHG信号を観測する。これまでの成果からDiOはその配向変化に伴い、H会合体の場合はSinPout、一量体の場合はPinPoutでSH電場の位相が反転しており、また、これらの信号は異なる領域から発生している可能性がある。それ故、SHG顕微像観察を通して、異なる領域におけるキラルドメインの成膜要因を調べることができると期待される。このユニークな観察手法を用いて詳細なキラルドメイン成膜過程の解明を目指す。また、系統的な知見を得るため圧縮過程に伴うキラリティを持つ両親媒製色素の成膜過程の観測も平行して行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は当初の予定と異なり次年度においても実験を継続する必要があるため、当該年度の支出を抑えたからである。使用計画としては実験における光学、化学消耗品費の使用として利用する予定である。
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Research Products
(5 results)