2016 Fiscal Year Research-status Report
流体の3次元的移動の観点に基づくスロー地震の仕組みの解明
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16K17792
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森重 学 京都大学, 理学研究科, 研究員 (70746544)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スロースリップ / 流体移動 / 沈み込み帯 / 蛇紋岩 / 浸透率の異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元の計算領域で、本研究で必要となる数値モデルを確立した。このモデルではまず、沈み込み帯周辺の岩石の流れ場と温度場を計算し、そこから流体の放出場所を推定する。次にスラブ直上の蛇紋岩内に浸透率(流体の通りやすさ)の異方性があるとしてスラブから放出された後の流体がどのように移動するのかを調べる。浸透率の異方性の大きさを変えながら計算を行った結果、その大きさが50倍あれば流体がスロー地震発生の深さまで到達することが分かった。それ以下の大きさだと流体が移動する途中で蛇紋岩の層を抜け真上に上昇してしまう。 次にモデルを3次元の計算領域に拡張した。このときスラブの3次元的な形状として、カスカディアと西南日本のスラブ形状を単純化したものを用いた。計算を行った結果、スラブが膨らんだ形状をしている場所では、流体が集まるように移動しそこでの流体量が増えることが分かった。逆にスラブがへこんだ形状をしている場所では流体が互いに離れるように移動し、そこでの流体量は減少する。まだ流体量とスロー地震の活動度との関係ははっきりと分かってはいないが、得られた結果によってカスカディアや西南日本で観測されている短期的スロースリップによるすべり量とスラブ形状との関係をうまく説明できる可能性がある。 これらの研究内容を5月に日本地球惑星科学連合大会、6月にゴールドシュミット国際会議、9月にマントルダイナミクスのワークショップ、10月に日本地震学会秋季大会で発表した。また結果をまとめたものを国際誌Journal of Geophysical Research: Solid Earthに投稿・受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の想定通りに研究が進み、学会発表だけではなく国際誌への論文受理まで進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの研究をさらに発展させ、流体移動の計算に岩石抵抗の効果を取り入れる。この計算では流体量、さらには間隙流体圧の時間変化まで調べることができるため、得られた結果と観測されたスロー地震との比較をより定量的に行えるようになると期待される。
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