2017 Fiscal Year Research-status Report
豊後水道スロースリップから精査する断層面上の摩擦特性の不均質分布
Project/Area Number |
16K17798
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
中田 令子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 特任技術研究員 (00552499)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | スパースモデリング / 長期的スロースリップイベント |
Outline of Annual Research Achievements |
豊後水道で繰り返し発生している長期的スロースリップイベントを数値シミュレーションで精度よく再現するために、すべり域の推定を行った。すでにスムースネスを制約条件とした解析が行われているが、平成29年度は平成28年度に引き続き、より明瞭にすべり域を推定するために、スパースモデリングの一種であるgeneralized fused lasso(一般化結合正則化)を用いた。地殻変動観測データを用いて、1997年、2003年、2010年に豊後水道周辺で発生した長期的スロースリップイベントのインバージョン解析を行ったところ、すべり域内部ですべり量が急変する不連続な境界があることが明らかになった。また、すべり域の浅部境界も、これまでよりも大きな空間勾配(急な空間変化)であることが示された。なお、いくつかの数値実験によって、すべり量の急な変化は、解析手法や観測点分布に起因するものではないことを確認できた。今回得られた長期的スロースリップイベントのすべり域浅部および内部の不連続な境界は、地震発生帯の下限および深部低周波微動の上限の位置とほぼ一致していた。これらは、長期的スロースリップイベントの浅部延長上で起きている地震発生帯および深部延長上で発生している深部低周波微動や短期的スロースリップイベントに至る、異なる時間的特徴を持った様々な地震発生メカニズムの系統的な理解に役立つ重要な知見となり得る。 スパースモデリングやアンサンブルカルマンフィルタを用いてスロー地震のデータ同化を行っている研究者と議論を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られた成果を論文として発表し、プレスリリースを行った。 計算時間が長いという問題点を解決するために、近似的に解くアルゴリズムを取り入れて、これまでと同様の結果が得られることを確認できた。 データ同化や統計的手法を用いて摩擦パラメタ推定を行うために、関連する研究者との打合せを行い、開発中のコードを提供していただいた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年から2016年まで3年間の観測データを新たに解析し、これまでに解析した3イベントで得られたすべり分布と比較し、共通点や相違点から示唆される知見について研究協力者と議論を行う。平成29年度に用いた手法を近似的に解くアルゴリズムを取り入れて、平成30年度はより効率的に、観測データ長、観測点分布、パラメタセットを変えながら、様々な条件で解析を行う。 アンサンブルカルマンフィルタを用いて豊後水道スロースリップイベントのデータ同化を行っている研究者と議論を行い、摩擦パラメタ推定手法について検討する。
|
Causes of Carryover |
研究協力者の助言のもと、今回適用した手法に合わせて、インバージョン計算をMatlabではなく統計解析用のフリーソフトウェアで実行できるR言語に変更し、既存のワークステーションにインストールできたため、購入予定であったMatlabライセンスやワークステーションを新規に導入する必要がなかった。 未使用額は、すべり分布や摩擦パラメタ推定の並列コードを実行するのに必要なワークステーションを購入する。また、研究協力者との打合せに係る旅費に使用する。
|
Research Products
(2 results)