2016 Fiscal Year Research-status Report
薄氷から厚氷までの全海氷データ同化による北極海熱・水輸送解析と気候変動予測の改善
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16K17805
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
豊田 隆寛 気象庁気象研究所, 海洋・地球化学研究部, 主任研究官 (90450775)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海氷 / 薄氷 / データ同化 / 北極海 / 水塊形成 / 再解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、使用する薄氷データの取得とモデルでの利用に向けた前処理を行った。 まず、国立極地研究所のウェブサイトからAMSR-E衛星(2002-2010年)による輝度温度観測の偏波比から求めた北極海における6.25 km格子の薄氷厚(0-0.2 m)日別データを取得した。このデータはいくつかの研究(Iwamoto et al., 2013; 2014; Hirano et al. 2016)で使用された実績があるが、(1) 海氷形成時のfreezing iceだけでなく、融解時のmelting iceを含むデータになっていること、(2) 実際には海氷がないと思われる海域で時々薄氷の(ある程度広い)分布が見られること、(3) 欠損日があること、(4) 小さなスケールのノイズ、が確認され、モデルを用いた実験で使用するための前処理が必要であることが分かった。よって、使用するモデルグリッド上の平均的な厚さと密接度に変換した後、既存データ(MGDSSTの海面水温・厚氷の密接度, JRA-55の地表面フラックス, ice motion vector衛星観測データ)を用いて海氷形成にかかわるfreezing iceのみを可能な限り抽出し、モデルでの海氷と水塊の形成の表現を高めるための薄氷入力データを得た。 また、薄氷を利用しない基本実験については、データ同化システムの改良(Usui et al., 2017)とそれを利用した最新全球海洋データ同化システムを準備し、パラメタリゼーションとパラメータ値の検討を行った。このモデルをベースにした薄氷利用システムの実装に向けて、モデル内での薄氷データの利用の詳細を検討して、新潟大学の浮田教授、JAMSTECの小室博士と議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薄氷データを取得・確認したところ、melting iceやノイズの影響が見られることが分かった。これらはモデルによる海氷・海氷場の解析に大きく影響することが予想されたので、薄氷利用システムを構築する前に、よりモデルでの利用に即した入力データの作成に時間を割くことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
前処理した薄氷データを利用するシステムのコード化を行い、データ期間の2002-2010年における実験を行う。結果を薄氷データを用いない実験と比較し、海氷・海洋場の再現性について調べる。結果を取りまとめて、論文投稿や学会発表を行う。 更に、薄氷の利用により海氷分布と貯熱構造の再現性の向上が期待される海洋・海氷場を初期値とする大気・海洋・海氷結合予測実験を行い、予測精度への影響とフィードバックプロセスを調べる。
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Causes of Carryover |
当初計画では情報収集とプレリミナリーな結果の議論が主目的の出張を予定していたが、研究着手後に焦点を絞った書籍などによる情報収集を中心に行う方がシステム開発・実験・論文執筆をより効率的に進めることが可能だと見込まれたため、出張を国内の1件にとどめて、次年度以降に成果発表など有効に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薄氷利用をする前の基準実験の検証と薄氷データ利用システムの構築に向けての情報収集のために国際的な再解析比較プロジェクトの会合とデータ同化サマースクールに参加する。また、データの集積・解析に必要なストレージの購入に充てる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Four-dimensional variational ocean reanalysis: a 30-year high-resolution dataset in the western North Pacific (FORA-WNP30)2017
Author(s)
Usui, N., T. Wakamatsu, Y. Tanaka, N. Hirose, T. Toyoda, S. Nishikawa, Y. Fujii, Y. Takatsuki, H. Igarashi, H. Nishikawa, Y. Ishikawa, T. Kuragano, and M. Kamachi
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Journal Title
Journal of Oceanography
Volume: 73
Pages: 205-233
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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