2017 Fiscal Year Research-status Report
巨大アンサンブルデータ同化を基としたマルチスケールデータ同化手法の開発
Project/Area Number |
16K17806
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
近藤 圭一 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 研究官 (00735558)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | データ同化 / アンサンブルカルマンフィルタ / 衛星観測 / 鉛直局所化 / マルチスケール |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から行っていた衛星観測データのための鉛直局所化の影響調査について、未完了の実験は本年度で終了した、論文を準備中である。ほかに、現実大気におけるマルチスケールデータ同化手法について研究を行った。 アンサンブルカルマンフィルタでは、計算資源制約上アンサンブルメンバー数は一般的に100程度に限られており、限られた資源で効果的に観測の情報を同化することが必要となる。課題代表者が提案したマルチスケールデータ同化手法は、複数の局所化スケールを用いることで異なるスケールの誤差相関構造を考慮することが可能でる。マルチスケールデータ同化手法はモデル誤差のない完全モデル実験で評価されてきたが、本研究では、現実大気のデータ同化システムNICAM-LETKFに応用し、実際の観測を同化することで、マルチスケールデータ同化手法を評価した。 本研究では、解像度112 km、鉛直40層のNICAM-LETKFシステムを用いた。アンサンブルメンバー数は40である。ゾンデ等の従来観測として米国国立環境予報センターで用いられている観測データ、及び衛星観測としてマイクロ波放射計データを用い、6時間毎に同化した。CTRL実験は従来通りの局所化(局所化スケール300km)、Dual1実験はマルチスケール局所化(局所化スケール300km+500km)、Dual2実験はマルチスケール局所化(局所化スケール300km+800km)とした。その結果、Dual1実験は、実験開始3週間程度はCTRL実験よりも成層圏で解析誤差を低減できるが、3週間以降はCTRL実験より悪化する。さらに対流圏おいては実験期間を通してCTRL実験より解析誤差が大きい。またDual2実験についてはDual1実験よりも悪い結果となっている。以上より、現実大気にマルチスケールデータ同化手法を応用する際には、さらなる工夫が必要とされる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、初年度に(1)現実大気におけるマルチスケールデータ同化手法の評価、2年度目以降に(2)衛星観測データ同化のための鉛直局所化関数最適化に取り組む予定であった。しかしながら、年々スーパーコンピュータ技術が発展している中、本研究で用いる「京」コンピュータが計算性能優位性を世界的にも維持できている現環境下で、より多くの計算資源を費やす(2)は学術的にインパクトが高いと判断し、前年度(初年度)に繰り上げ実施、(1)を本年度に実施し、ともに完了した。 また本年度は、所属機関を理化学研究所から気象研究所に変更したため、今後はNICAM-LETKFを用いないが、大気微量成分のデータ同化システムに応用可能なマルチスケールデータ同化システムの研究に着手する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
衛星観測データのための鉛直局所化の影響調査について、未完了の実験が終了したので、論文を投稿予定である。 本年度着手したマルチスケールデータ同化手法は様々な設定で実験を行ったが、現実大気では従来手法を上回る性能を発揮できない結果となった。マルチスケールデータ同化手法の安定的な動作にはさらなる工夫が必要される。一方で所属機関の変更により、NICAM-LETKFを使った研究ではなく、大気微量成分のデータ同化システムを想定したマルチスケール同化手法研究に取り組む予定である。具体的には、初年度に行った鉛直局所化の成果の応用、マルチスケールデータ同化手法の適用である。大気化学輸送モデルは大気モデルよりも非線形性が強いとされるため、マルチスケールデータ同化手法の適用あたっては現象の非線形性を考慮可能なような工夫も必要であると考えている。
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Causes of Carryover |
【理由】 当初計画では、ノートパソコンを購入予定であったが、所属機関の変更により購入を延期した一方でバックアップ用ハードディスクドライブ等消耗品を購入した。これにより当初計画からの差額が生じた。 【使用計画】 次年度所要額については、成果発表用のノートパソコン購入、日本気象学会春季大会・秋季大会、日本地球惑星科学連合2018年大会に参加する予定である。また今後出版予定の論文の投稿費に使用する予定である。
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