2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17807
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大塚 成徳 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (40585022)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フェーズドアレイ気象レーダ / 3次元降水ナウキャスト / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は研究の順序を平成29年度・30年度と入れ替え、3次元レーダ画像の線形時空間補外予測システムへのデータ同化導入および高速計算手法の開発に着手した。フェーズドアレイ気象レーダは30秒毎に半径60km圏内の雨雲を3次元的に観測することの出来るレーダであり、急速に発達するゲリラ豪雨のような現象の早期検出に貢献すると期待されている。本研究では、この3次元レーダ画像の時系列を用いて、雨雲の移動ベクトルを計算し、そのまま動いた場合にどうなるかを予測する「降水ナウキャストシステム」を開発している。従来は移動ベクトル計算の際にノイズが多く、予測精度向上の妨げになっていた。本研究ではデータ同化を用いてより精度の高い移動ベクトルを算出し、予測精度を向上する降水ナウキャストシステムを開発した。これにより、10分先までの予測が現実的な精度で行うことが出来るようになった。ゲリラ豪雨は10分程度で急発達し、深刻な被害をもたらすこともある現象であるため、この10分先までの予測が実際に利用可能になれば、大きな意義があると考えられる。 この3次元降水ナウキャストシステムは、従来の2次元的な降水ナウキャストに比べて計算量が大幅に増加する。そのため従来のままの計算では30秒毎に取得される観測データをリアルタイムに処理することが出来ない。本研究では将来的な実用化に向けて、3次元移動ベクトル計算の高速化に取り組んだ。従来手法の相互相関法を高速に計算できるように修正し、計算の解像度をやや下げることで、十分な速度が得られるようになった。これにより、リアルタイムでの実運用に向けて大きく前進したと考えられる。 なお、本研究はJST CREST課題JPMJCR1312「「ビッグデータ同化」の技術革新の創出によるゲリラ豪雨予測の実証」(代表:三好建正)と密接に連携して実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では研究の実施順序を入れ替えて実施したものの、予定していた二つの研究項目、3次元降水ナウキャストシステムへのデータ同化導入と、降水ナウキャストシステムの高速化において、当初の目的を達成しており、順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元降水ナウキャストシステムについては、リアルタイムデータ転送システムの開発を行い、実際にリアルタイム運用することを目指して開発を継続する。また、当初計画で平成28年度に予定していたブリーディング法による積雲対流スケールのカオス的誤差成長の測定に着手する。領域大気モデルWRFを用いて100mメッシュの高解像度シミュレーションにより積乱雲を再現し、コントロール実験と微小な擾乱を加えた実験を比較することで誤差の発展を観察する。誤差の大きさを定期的に規格化することで、誤差発展の特徴的時空間スケールを抽出する。
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Causes of Carryover |
研究計画の順序を入れ替えたことにより、平成28年度は研究発表のための旅費と論文投稿料などが変更になり、平成29年度以降に支出する見込みとなった。また、予定していた計算機の購入も平成29年度になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はこれらの旅費、論文投稿料の支出、計算機の購入を予定している。
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