2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17807
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大塚 成徳 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (40585022)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フェーズドアレイ気象レーダ / 降水ナウキャスト / 積雲対流 / 平成30年7月豪雨 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、3次元レーダ画像の線形時空間補外予測システムの開発を進めた。フェーズドアレイ気象レーダは30秒毎に半径60km圏内の雨雲を3次元的に観測することの出来るレーダであり、急速に発達するゲリラ豪雨のような現象の早期検出に貢献すると期待されている。本研究では、この3次元レーダ画像の時系列を用いて、雨雲の移動ベクトルを計算し、そのまま動いた場合にどうなるかを予測する「降水ナウキャストシステム」を開発している。前年度は実際にシステムのリアルタイム運用を開始し、スマートフォンアプリへの配信も行った。 これまで対流域の予測精度が良くなるように開発を行ってきたが、常時運用において層状性の降水でも適切に予測が出来るよう、アルゴリズムの改良を行った。平成30年7月豪雨の際には、層状性降水域の中に対流性降水域が埋め込まれている状況を適切に予測出来た。予報精度が持続予測に比べて良いことを統計的に確認した。 本課題で開発した降水ナウキャストシステムは線形的な時間発展を仮定するため、予測時間が長くなって非線形性が卓越すると、予測精度が急速に落ちる。そのため、一般に短期の予測はナウキャストを用い、長期の予測は物理に基づいた数値天気予報を用いる。その中間では、両者の適切な重み付き平均を取ることで、精度が上がることが知られている。従来は領域内で一様な重みを用いていたが、空間的に分布を持つ重みを用いて精度向上させる手法を開発した。まず二次元降水ナウキャストで当該手法の有効性について調査を行った。 なお、本研究はJST CREST課題JPMJCR1312「「ビッグデータ同化」の技術革新の創出によるゲリラ豪雨予測の実証」(代表:三好建正)および宇宙航空研究開発機構・降水観測ミッション第8回公募研究「GPM観測のデータ同化の高度化」(代表:三好建正)と密接に連携して実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では研究の実施順序を入れ替えて実施したものの、予定していた降水ナウキャストシステムのリアルタイム運用と予測精度の統計的な検証において当初の目的を達成しており、順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元降水ナウキャストシステムについては、リアルタイム運用を継続すると共に、得られた予測に関する検証を行い、線形予測の適用範囲と限界について明らかにする。利用できるレーダデータの増加を念頭に、データ量が増加した場合でもリアルタイム計算できるようにさらなる高速化を検討する。また、ブリーディング法による積雲対流スケールのカオス的誤差成長の測定とマルチモデルアンサンブルカルマンフィルタに着手する。
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Causes of Carryover |
理由:論文の出版時期に変更が生じたため。
使用計画:論文の出版費に充てる予定である。
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