2017 Fiscal Year Research-status Report
世界初の長時間連続/高分解能/多点観測の構築に基づく中・短波帯オーロラ電波の探究
Project/Area Number |
16K17811
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
佐藤 由佳 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (60601408)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズマ波動 / 電波 / オーロラ / 地上観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施した初期設計を基に実際の観測装置の製作を進め、所期の性能を満たすことを確認した。本観測装置は、平行3面と直行1面のループアンテナ4基からなるアンテナ部と、Ettus Research社製ソフトウェア無線機(USRP N210)2台と汎用パソコン1台からなる制御・データ収録部で構成されている。スカンジナビア半島北部での観測装置の設置は平成30年度夏季に予定しているが、設置場所の候補地の絞り込みを行うために、現在進行中の大型国際共同プロジェクトのEISCAT_3D計画の進展およびEISCAT_3D計画で建設予定の複数のレーダーサイトの電磁ノイズや観測所の施設環境などに関わる最新情報を集め、最終的にフィンランドのソダンキラ地球物理観測所が管理するKAIRA観測点(フィンランド・キルピスヤルビ)を設置場所として選定した。現地の担当者が来日時に面会し、設置に向けた打ち合わせを行い、その後も電子メール等を用いて打ち合わせを実施した。 加えて、来年度の連続観測の開始に向けた準備として、オーロラ電波の現象の自動同定の手法の開発を進めた。パターン認識の問題に帰着させ、2008年以降取得していた現有の電波スペクトル観測データを試験データとして、雷放電や無線通信等の人工的なノイズとオーロラ電波を機械的に識別することを試みた。前処理として背景スペクトルを導出し、その後、背景差分のスペクトルの中で閾値を超える信号に対してその特徴を表す量(ピーク周波数、ピーク強度、周波数帯域幅、中心周波数、それらの時間変化率など)を計算し、特徴ベクトルの抽出を行った。この結果、目視でもはっきりと特徴が捉えやすい現象については、特徴ベクトルの分布の偏りの違いからオーロラ電波と人工的なノイズを分けて識別をすることが可能であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度中の産前産後および育児休暇の取得に伴う研究期間延長に伴い、当初の研究計画を変更して平成29年4月より研究を再開したが、その後は変更後の研究計画に従って研究を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
観測装置の最終調整、日本国内での最終試験観測を実施し、夏季にスバールバルとスカンジナビア半島北部の観測点に滞在し、設置作業を行う。スカンジナビア半島北部の観測点は新規設置点のため、始めに観測点周りの電磁ノイズ環境や土壌環境を実地調査し、アンテナの設置場所を決定する。設置完了後には、受信強度・到来方向についての較正データを現地で取得する。 本観測システムによる連続観測においては大量のデータが生成されうるため、平成29年度中に開発を進めた現象の自動同定の手法の改良を進め、スペクトルデータを基にしてオーロラ電波をリアルタイムで自動同定して不要データを削除するための観測プログラムを作成する。また、各観測点の取得データのサマリープロットのデータベース化・ウェブ公開を進める。 得られた観測データを基に、中・短波帯のオーロラ電波の各イベントを同定し、出現特性やスペクトル微細構造の特徴を明らかにする。干渉計観測データについては、到来方向の推定における計算手法の最適化を図る。加えて、電離圏観測データを基にモデル化した電子密度分布中での電波のレイトレース計算を行う。 以上の研究の進捗や得られた成果について、各国内外の学会や研究集会(地球電磁気・地球惑星圏学会、極域科学シンポジウムなどを予定)で報告する。
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