2017 Fiscal Year Research-status Report
長時間スケールでみた南海トラフにおける地震・津波の再来間隔と地殻変動の多様性
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16K17818
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤野 滋弘 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80466234)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 南海トラフ / 津波 / 地震 / 地殻変動 / 津波堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
徳島県海部郡牟岐町の沿岸湿地において人力掘削による堆積物試料採取を行い.14枚の津波堆積物の可能性がある砂層を発見した.調査地は1946年の昭和南海地震の際に沈降したことや津波で浸水したことが明らかになっている.大型植物化石を用いた放射性炭素年代測定の結果14枚のイベント層は約2000-7000年前に堆積したことが分かった.シンウォールサンプラーで掘削したコアについて珪藻分析を行った結果,群集組成の変化から4つのイベント層を構成する砕屑物が汽水~海水環境から供給されたことが分かった.それら4つのイベント層の内,特に3つのイベント層ではイベントの発生を境に海水の影響が大きくなるという環境変化が確認された.このような環境変化の原因として,地震に伴う地殻変動(沈降)が考えられる.これは1946年の昭和南海地震の時の地殻変動の傾向と一致する.また,これらのイベント層で観察された級化・逆級化構造や明瞭で侵食的な基底面などの堆積構造はこれまでに報告されている現世津波堆積物の堆積構造と共通している.汽水~海水環境から砕屑物が供給されたこと,堆積前後に環境変化を伴っていたこと,現世津波堆積物と共通する堆積構造を有することから,これら3つのイベント層を南海トラフで発生した地震による津波堆積物であると結論付けた.3つの津波堆積物は4400年前から5600年前の間に堆積したことが年代測定から明らかになった.牟岐町の津波堆積物と年代値が重なる津波堆積物が徳島県美波町と高知県東洋町から報告されていることから,牟岐町で見つかった地殻変動・津波堆積物は,四国東部に広く影響を及ぼすような海溝型地震・津波によるものである可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点までに和歌山県における野外調査・試料採取と分析が完了している.徳島県における調査でも野外調査・試料採取と年代測定,微化石分析が概ね完了した.徳島における調査ではこれまで情報が限られていた年代において新たに津波堆積物と地殻変動の痕跡を発見することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度半ばまでに徳島県における試料の分析(微化石分析と年代測定)を完了させる.また,H30年度末までに和歌山県と徳島県における研究の結果を査読付国際誌に投稿することを目指す.
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Causes of Carryover |
<理由> H29年度に旅費ならびに外注分析費が想定よりも少なかったため. <使用計画> H29年度に使用しなかった旅費,年代測定費はH30年度における補足調査や分析で使用する予定.
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] Features of erosion and sedimentation due to the September 2015 flooding of the Kinu River.2017
Author(s)
Matsumoto, D., Sawai, Y., Namegaya, Y., Tanigawa, K., Nakamura, A., Yamada, M., Shinozaki, T., Takeda, D., Fujino, S., Pilarczyk, J.E.
Organizer
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
Invited
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