2016 Fiscal Year Research-status Report
姶良カルデラ下マグマと温泉の関係及びその流路構造解明
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16K17822
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
川端 訓代 鹿児島大学, 理工学研究科, 特別研究員 (10773468)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 姶良カルデラ / 断層 / 温泉 / ヘリウム同位体比 / 火山 |
Outline of Annual Research Achievements |
地殻変動(火山や地震など)の活動度の指標を得る様々な研究のひとつに流体(湧水や付随ガス)の利用が挙げられる。本研究では鹿児島県の温泉水を利用し、姶良カルデラ下に存在するマグマと温泉の関係・地下流路構造を明らかにする事を目的としている。姶良カルデラは活火山「桜島」「若尊(わかみこ)」を胚胎する巨大カルデラであり,カルデラ内外では、火山の影響を受けた温泉が多数湧出している事が知られている。姶良カルデラ内の「桜島」や「若尊」は地下のマグマとの関係については研究がなされているが、鹿児島県下の温泉水については地質との関係の議論に限定されている。本研究ではこれら既往研究と得られるカルデラ周囲の温泉水とマグマの関係から、カルデラの浅部流路構造を統合的に議論する。 本年度はカルデラ下に存在するマグマと温泉水の関係を解明するために、桜島を含め、姶良カルデラ周辺の温泉水の採取を行った。その温泉水について、ヘリウム同位体測定、酸素・水素同位体測定、溶存成分測定、ラドン濃度測定を行った。ヘリウム同位体および酸素・水素同位体は産業技術総合研究所において、溶存成分とラドン濃度は鹿児島大学にて測定を行った。その結果、ヘリウム同位体比が姶良カルデラ内で高いほか、一部の断層周辺において高くなる傾向が認められた。酸素水素同位体比からは、ほとんどの温泉が天水起源であることが明らかとなった。これらの分析結果から、姶良カルデラとその周辺の温泉水の起源は天水でありカルデラ内や一部の断層周辺ではそこにマグマからのガスが混入している事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
姶良カルデラ周辺の温泉水に対するカルデラ下マグマの影響を調べるため、当初の計画では初年度に温泉水の採取、ヘリウム同位体測定、酸素・水素同位体測定・溶存物質測定、ラドン濃度測定を行う予定としていた。予定通り、測定を全て終える事ができ、得られたデータをまとめるに至っている。そのため研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、28年度に得られたデータから姶良カルデラ周辺における酸素・水素同位体およびヘリウム同位体比マップを作成し、マグマの影響がおよぶ範囲を検討する。そして、マグマから温泉に至る経路を推定するために、温泉水成分と地質の関係を明らかにし、流路構造を明らかにする。 姶良カルデラ周囲における地下構造、特に流体の通路となる断層や亀裂分布に関する情報は少ない。温泉組成は通過する地質と反応して組成を変化させることから、平成28年度で行った温泉水の溶存成分と、関係する地質の岩石組成について次の順序で比較解析を行い流体流路の推定を行う。(1)湧出地と地質図の関係から断層・褶曲など地下構造を含むだいたいの地質の推定を行う。この際、活断層が存在すると推定されている地域においては、ラドン濃度測定を行い活断層の有無・影響を再検討する。(2)推定地質の岩石を採取し、岩石組成を分析から明らかにする。(3)流体と岩石の科学組成を数理科学的手法を用いて比較する。流体と岩石の科学組成比較に用いる手法は、主成分分析および正準相関分析を用いる。結果から、関連する地質が得られ、流体の経路を決定する。温泉の地理的配列・溶存成分特性の類似性から隠れた断層・亀裂分布などの地下構造の推定も試みる。 上述の岩石に関する解析に平行して、桜島に湧出する温水を定期的に採取し、噴火に伴う温泉水変化の有無を調査する。また鹿児島県下の温泉について、古い文献に記載された温泉データを年代毎にまとめ、温泉水の時系列変化を明らかにし、地殻変動との関係の有無をさぐる。
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