2016 Fiscal Year Research-status Report
南海トラフ軸における微小断層発達の理解と形成過程の解明
Project/Area Number |
16K17824
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山下 幹也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究員 (00415978)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海底地形 / プロトスラスト帯 / プレート境界断層 / 赤色立体地形図 / 反射法地震探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は南海トラフ軸における微小断層の現象解明に向けたより詳細な分布を調べるため,各種公開されている既存海底地形データおよび新規に取得したデータの収集・統合による高精度マッピングおよび地形立体表現手法「赤色立体地形図」を用いたプロトスラスト帯の抽出を行った。作業時間も考慮し年度前半までに得られたトラフ軸を横断するデータを収集し編集を行った.特に2013・2014年に取得したKY13-11およびKY14-07航海で取得したトラフ軸を横断する測線について,最も細かい50mメッシュデータを収集しデータ統合を行った.その結果トラフ軸にみられる前縁断層よりもさらに海側のプロトスラスト帯の海底面にも線状の地形的特徴が抽出され,反射法地震探査断面で見られる微小断層と一致していることが確認された.従来の海底地形図では付加体の地形変化率のほうが大きいため,微小な変形を広域的に知ることは困難であったが,赤色立体地形図を用いることで特徴が明らかになった.このことから前縁断層だけでなく,プロトスラスト帯内部の変形についても,あるせん断弱面に沿って発達することが観測事実として初めて明らかになった。また付加体の変形様式についても赤色立体地形図で強調することによってより明瞭にイメージングされた.これらの成果報告については年度後半に参加可能な学会がなかったため,平成29年5月ハワイでの米国地質学会での発表および平成29年度中の国際誌への投稿で成果発表を行う.また南海トラフ域における赤色立体地形図は,平成29年度科学技術週間「美」パネル展にも採用され関係各所において展示予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内の取得されたデータについては利用可能な状態になるのに時間を要すことを考慮し,年度前半までの航海の中から調査の有無にかかわらずデータ取得がされたものをすべて収集した.またすでにデータ編集の一部が別プロジェクトで行われていたものを流用したため,効率よいデータ編集が可能となった.トラフ軸周辺に関しては実験モデルの基礎となる地形データが50mスケールで得られた.従来の海底地形表示では検出できなかった微小な地形変化を赤色立体地形の技法を用いることによってプロトスラスト帯内部で海底地形の変形が線状になる現象が初めて抽出された.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度後半以降に取得された海底地形データの収集・統合を行うとともに,既存反射法地震探査データをデータベースソフトに登録し,堆積層境界や上部地殻上面などを読み取り,各層厚分布の計算を行う.さらにトラフ軸周辺における各層序の空間マッピングを行う.予算の減額分は実際のコア資料と反射断面の対比を削減することで抑制する代わりにデータベース上でアトリビュート解析を行うことで,地層境界の物理的特徴を抽出する.これらのデータをもとにモデル化し最終年度にプロトスラスト帯復元のための砂箱実験を実施する.
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Causes of Carryover |
平成28年度中にハワイ大学のGreg Moore教授を訪問し南海トラフ軸周辺の反射法地震探査データ解釈を行う予定であったが,先方が長期不在となったことに加え,成果発表を平成29年5月にハワイで開催される国際学会(Geological Society of America)に合わせて訪問することで経費の圧縮が見込める変更をしたことで未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度未使用額については平成28年度成果の国際学会での発表および反射法地震探査データ解釈をハワイ大学で実施するために,Greg Moore教授への訪問旅費・及びデータ複写代およびハワイでの国際学会参加旅費・参加費に使用する.また,一部未処理であった南海トラフ軸周辺の海底地形データの統合処理を行う.
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