2017 Fiscal Year Research-status Report
中生代における海洋頂点捕食者と鞘形類の共進化史復元
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16K17825
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊庭 靖弘 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80610451)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古生物学 / 頭足類 / 捕食被食関係 / 共進化 / 海棲爬虫類 |
Outline of Annual Research Achievements |
中生代から新生代の2.5 億年間,魚竜から鯨類まで,頂点捕食者はそれぞれに絶滅と放散を繰り返してきた.特に白亜紀後期には頂点捕食者のターンオーバーが集中しているが,これらの要因は不明である.本研究は,後期白亜紀の頂点捕食者の胃内容物化石等を精査することによって, 頂点捕食者と頭足類の捕食被食関係を基にした共進化史を解明することを目的としている.
昨年度に続き,野外調査および標本調査によって多くの中生代胃内容物化石を得ることが出来た.しかしながら,①内容物として多く含まれる頭足類顎器は従来の研究で示されたものよりも多様で,未記載種が多く,科・属レベルでの分類が困難であること,②内容物として確認できるものは,スラブ標本の表面に見えているものに限られ,胃部分化石の十分な内部情報量が得られないこと,という問題があった.そこで,今年度は,上部白亜系より70を超える頭足類顎器の標本を得て,これの分類学的研究を推進した(従来の研究では,10数標本という限られた標本から分類学的研究が行われていた).本研究によって,胃内容物の顎器を属レベルで分類する上での基礎的情報が提供された.また,岩石内部を詳細に可視化する次世代スキャナの開発に取り組み,これを胃内容物化石に適用する段階まで到達した.さらに,大型放射光X線CTを駆使して,胃内容物化石の高解像での可視化にも成功することができた.今年度の研究によって,これまでの研究の障壁の多くを突破することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで数種しか知られていない上部白亜系から,従来では考えられないほど多様性の高い鞘形類を見出すことに成功した.さらに,これらの分類学的研究を推進し,胃内容物化石にフィードバックできる多くの知見を得ることができた.また,これまでの手法では,サイズが小さく,華奢な硬組織からなる胃内容物化石を可視化することは極めて困難であったが,これを解決するために,次世代内部構造スキャナの開発を推進し,この技術を本研究に応用する段階まで到達した.これと並行して,大型放射光X線CTで胃内容物化石の断層像を高解像で取得することに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
1胃内容物化石の内部可視化:海棲爬虫類の胃内容物として含まれる化石群は,強固な硬組織を持たないために,従来の化石抽出法 だけでは胃内容物化石を正確に捉えることができない.この研究の障壁を乗り越えるために,連続断層画像取得・解析技術を応用した 新たな分析方法を適用し,研究をさらに推進する.この高精度な標本解析によって,岩石標本に封じ込まれた捕食被食関係を正確に理解することができる. 2頭足類顎器の詳細な分類:今年度に得られた知見を基に,胃内容物として含まれる顎器の分類を,科・属のレベルで行い,頂点捕食者の胃内容物の実態をより詳細に捉える.さらに,各タクサにおける餌の選択性の有無などを検討する.これらのデータを元に,長時間軸上での海棲爬虫類と頭足類の捕食被食関係史をまとめ,成果を国際誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
国内での標本調査が未記載標本や自ら新標本を採集するなど予想以上に順調に進展したため,海外出張にかかるコストが抑えられたため.繰り越した予算は,標本抽出・解析方法の確立に用いることで,従来の胃内容物化石調査に比べて高精度な復元を目指す.
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