2018 Fiscal Year Annual Research Report
Morphological function of zig-zag commissure in orthide brachiopods: biomechanical insights into adaptation and evolution
Project/Area Number |
16K17827
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
椎野 勇太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60635134)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古生物 / 進化 / 適応 / 絶滅 / バイオメカニクス / 流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
オルドビス紀における生物間の相互作用や環境の細分化は,生物種の爆発的な多様性増大イベントをもたらした.中でも,腕足動物オルティス類は,このイベントを特徴づける中心的な無脊椎動物であるにも関わらず,どのような生態的特性を持って劇的な適応放散を遂げたのか未解明である.そこで本研究は,ジグザグ縫合線を備えたオルティス目プラチストロフィア科に属する腕足動物の殻形態と濾過摂食水流との関係に注目し,化石標本を用いた形態解析および流体解析を行った. プラチストロフィア科Vinlandostrophia ponderosaの殻模型を用いて簡易的な粒子追跡法による2次元流体解析を行った結果,殻形態が受動的に渦流を形成し,螺旋状の濾過器官(触手冠)を使って渦流から効果的にエサを濾過できる適応形態であった可能性を導いた.ジグザグ縫合線の機能を検証する比較実験からは,ジグザグ縫合線が殻内側で生じる流れを弱化させ,渦流を低速に保つ機能を備えていたことが明らかになった.また,外部の流れが低速の場合は,殻まわりの流向に関わらず,生物体に対して常に同じ回転方向の渦流を形成できることがわかった.緩やかな流れの中では,運ばれてくるエサの量も少なくなりやすい.殻内側で生じる渦流の方向を統一することで,そのような流水環境下でも濾過摂食を確実かつ安定に実現できたと想像される. ジグザグ縫合線をつくる放射肋の数や太さには種内変異が認められるが,この変異幅は種間で異なる.V. cyphaでは,受動的な渦流形成に寄与する殻の正中線部分に変異が認められやすく,各個体の微環境に応じて機能強度を調節していた可能性がある.V. cyphaはV. ponderosaの絶滅後も残存していたことを考慮すれば,ジグザグ縫合線の機能とその可塑性によって絶滅の明暗が分かれていたのかもしれない.
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